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アンソロジー「Re-born はじまりの一歩」

2021年11月23日 | アンソロジー


実業之日本社文庫
2010年12月 初版第1刷発行
349頁

行き止まりに見えたその場所は自分次第で新たな出発点になる
再生の物語が7編

宮下奈都「よろこびの歌」
高校一年生の御木元玲
世界的なヴァイオリニストの娘で声楽家を目指し音大付属高校を受験するも失敗、私立女子高の普通科に進学します
挫折感や母親へのコンプレックス、音楽を諦めきれない思い
鬱屈した日々を送る中、苦手なマラソン大会でクラスメートから思わぬ応援を受け大切なものに気づくのでした


福田栄一「あの日の二十メートル」
大学一年生の広池克彦
唯一合格した大学に進学するも勉学への熱意はなく陰鬱な思いを振り払うために毎日市民プールで泳いでいます
ある日、ひとりの老人に泳ぎを教えて欲しいと言われ、渋々ながらコーチをすることに
老人の目標は二十メートル泳ぎ切ること
練習を重ねて少しずつ泳げるようになります
ですが心臓病を患っている老人を心配して訪ねて来た孫娘に無理やり連れ帰られてしまうのでした
老人が語った『二十メートル』の理由が切ないです
これも目標を失っていた青年が大切なものに気づき、また前に進もうとする内容でした


瀬尾まいこ「ゴーストライター」
高校二年生の戸村コウスケ
次男ですが年子の長男が東京の大学に進学することになっていて家業の小さな中華料理店を継ぐ予定でいます
上手く立ち回って実家から出ていこうとする兄とはよい関係とはいえません
しかし、荷物を積んだ軽トラで兄が去って行った後、一抹の寂しさを覚えるのでした


中島京子「コワリョーフの鼻」
隣席の主婦たちの鼻に関する話を聞いて夫との会話を思い出した主婦
遠い将来、地球温暖化の影響で人類の鼻がとれる、と言うのです
さらに、ゴーゴリーの小説から鼻行類の話まで
そして自分が抱える秘密を夫に打ち明ける決心をするのでした
鼻行類と聞いて沢村凛「ヤンのいた島」を思い出しました


平山瑞穂「会ったことがない女」
人生も終盤にさしかかってきた唐津喜一
若い頃、弟のように面倒を見ていた男性から交際している女性に別の女性の人格が入り込む時があると相談を持ち掛けられます
実際に現場を見ますが演技か何かだろうと考え真剣に対処しないまま長い年月が過ぎ、いつしか彼との連絡も途絶えていました
ところが自分の老い先が長くないと認めてからは、あの時何とかしてあげれば良かったのではないか気になって仕方がありません
Re-bornするのはその女性の孫にあたる女性・浜野悠里です
少し不思議でエロティック、でも爽やかさの残る物語でした


豊島ミホ「瞬間、金色」
父親の転勤で中学二年で転校したシンジュ
これまでは転校の度に要領よく過ごす術を心得ていたのですが、何故かクラスで浮いているナナミと仲良くなり自分も浮いてしまいます
これまでの処世術は何だったのだろう、学校での居心地の悪さもナナミがいれば毎日が楽しくて仕方ありません
ところが高校に進学し、ナナミとは別れ別れに、さらに中学でシンジュたちを苛めたグループの筆頭だった女子が同じ高校でクラスも一緒になってしまい…
色々あったけれど大人になったシュンジュとナナミの友情は続いています


伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
高校入学を控えた沙希
今日は、両親が離婚し沙希も高校の寮に入るため、家族が暮らしていたマンションからそれぞれが出ていく家族解散の日
父親の携帯に『適番でメールしてみました。友達になろうよ。ドライブとか食事とか』という内容のメールが届きます
母親や沙希が猛反対するも父親は「友達が欲しいんだよな」と言いながら返信します
沙希の家族と、メールを送った若者・岡田の出会いと(多分)別れを小気味よく描きます
これ、2013年に読んでいます
けれど全く内容を覚えていませんでした…

7編とも爽やかな心持になれる素敵な作品でした


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