「83歳のやさしいスパイ」
原題 THE MOLE AGENT
2020年 チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン
【Amazon Prime Video】
老人ホームの内定のため入居者として潜入した83歳の男性セルヒオ(セルヒオ・チャミー)の調査活動を通してホームの入居者たちのさまざまな人生模様が浮かび上がる様子を描いたドキュメンタリー
妻を亡くして新たな生きがいを探していたセルヒオは80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人に応募します
業務内容は、ある老人ホームの内定調査で、依頼人はホームに入居している母・ソニアが虐待されているのではないかという疑念を抱いていました
セルヒオはスパイとして期間限定で老人ホームに入居し、ホームでの生活の様子を毎日探偵事務所に報告することになりますが、誰からも好かれる心優しい彼は調査を行う傍ら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていきます
本作がドキュメンタリーと知ったのは鑑賞後のこと
セルヒオといいホーム入居者の老婆たちといい、ご高齢の芸達者な役者さんを揃えたものだと感心していたのですが間違いで、素の人と人との関りを撮影したものでした
何日かを入居者たちと過ごしたセルヒオが知ったのは老人たちの孤独、恐怖
最後の依頼人に向けての言葉「内定調査より、ソニアに会いにホームへ来て」に思わず拍手でした
セルヒオ・チャミーさん、お元気でお過ごしかしら
「テーラー 人生の仕立て屋」
原題 TAILOR
2021年 ギリシャ、ドイツ、ベルギー
【Amazon Prime Video】
アテネで父の代から続くテーラーを営む男性ニコス(ディミトリス・イメロス)
毎日、身だしなみを整えて客を待つものの不況の嵐が吹き荒れる中で客足は遠のき、店は銀行に差し押さえられ、ショックで父親は倒れてしまいます
困り果てたニコスは手作り屋台で移動式の仕立て屋を始めることにしますが道端の屋台では高級スーツは全く売れません
それでも毎日外へ出るニコス
ある日、ウェディングドレスの注文が舞い込んできます
それまで紳士服一筋だったニコスは隣家の母娘に手伝ってもらい、女性服の仕立てを学びながら人生初のウェディングドレス作りに挑みます
台詞は少なく余計な説明が省かれています
しかしストーリー展開はそれほど複雑ではないので内容の把握がしやすく、堅物だったニコスが徐々に身近に見えてきて分かりやすかったです
当初は、ニコスのやり方に反対だった父も、ニコスの作品に満足の様子
全く知らなかったアテネに暮らす人々の日常を少し知ることができました
実際に、ニコスの車があちこちを走り回って、素敵なウェディングドレスで女性たちを幸せにしているような気がします
隣家の母親との関係は描く必要があったのかな?
「アバウト・レイ 16歳の決断」
原題 3 GENERATIONS
2015年 アメリカ
【Amazon Prime Video】
ある日、16歳のレイ(エル・ファニング)は身も心も男性として生きたい、そのためにホルモン治療を受けたいと母マギー(ナオミ・ワッツ)に告白します
動揺を隠しきれないマギーですが、レズビアンであることをカミングアウトしパートナーと暮らす祖母ドリー(スーザン・サランドン)はレイの決断を応援します
努力を重ね、自分らしく生きていこうとするレイを見て意を決したマギーは、ホルモン治療の同意書にサインをもらうため、レイの父親である元夫に会いに行きます
祖母、母、父たちの葛藤を描くことでレイの人生がレイ一人だけのものではないことが見えてきます
様々な思いがあっても、最後には誰もがレイの幸せを願う過程を描きます
原題「3 GENERATIONS」は祖母、母、レイの3代の女性たちを指します
正解のない難しい問題をテーマに描いた3世代の親子の温かな物語でした
『83歳のやさしいスパイ』、温かくて優しい映画でしたね。
うちの母親は認知症で京都の施設に居ますが、
東京にいる僕が頻繁に訪れていたとき(コロナ前)、
施設の方と話をしていて、近くに居ながら
ちっとも顔を出さない家族が多いと聞いたことがありました。
この映画の一部分と重なり、
「なんで、自分の親じゃないの」って思ったことを思い出しました。
セルヒオの人となりがあってのものです。
近くに住んでいても会いに行かないなんて厄介払いみたいで悲しいです。
cyazさんのお母様は元気で過ごしておられるのかな。
今はまだコロナが心配ですけど自由に面会できる日が少しでも早く来ることを願います。