新潮文庫
2008年3月 発行
解説・長嶋康郎
333頁
東京近郊の小さな古道具屋でアルバイトをするヒトミ
ダメ男感漂う店主・中野さん
きりっと女っぷりのいい、中野さんの姉・マサヨさん
わたしと恋仲であるようなないような、むっつり屋のタケオ
どこかあやしい常連たち
浮世離れしたような小さな古道具屋を舞台に年の離れた4人の日々を描く
自分の年齢のせいか主人公のヒトミよりマサヨさんの言動に頷くところが多かったです
50代に入ってから、ゆきちがいだの誤解だのが起こったとき、簡単には相手を責められなくなった
年をとればとるほど人には厳しく、自分には優しくなっている
若い頃は人は死ぬものではないと思っていた
けれどこの年頃になると、人はいともかんたんに、すぐさま死んでしまう
責めた相手が、翌日に死んでしまうかもしれない
相手をなじる前に、激しい憎しみやなじりを受け取ることができるくらい相手が健やかなのか。気にかけなければならない
ヒトミとタケオの恋模様については、勝手にどうぞ、ってとこかな
中野さんやマサヨさんの『恋』の行方にドキドキしました
解説の長嶋さん(古道具やさん)によれば
川上さんの実の弟さんは古物商を営んでいるそうで
文中に出てくる古物店「トキゾー」は弟さんのお店の名前「時間蔵」をカタカナにしたものとか
中野商店の運営や店内の様子にリアリティがあるのは弟さんのお店を具に観察されたからでしょうか
店内に置いてある、一般人なら何の気づきもなく見過してしまうような品物や、その周囲の空気などが的確に描写されています
読みながら、まるで中野商店の一角からヒトミたちの様子を眺めているかのようでした
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