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谷川直子「おしかくさま」

2014年04月10日 | た行の作家

 

 

河出書房新社
2012年11月 初版発行
2013年1月 3刷発行
163頁 

 

第49回文藝賞受賞

 

“おしかくさま”はお金の神様です

バツイチ子供なし、ミナミ・49歳
先行き不安な彼女が見つけた希望とは?

現代日本のお金信仰を問う

 

 

離婚後、ウツ病を発症
引きこもり生活を続けていたミナミのところに妹のアサミから1本の電話が入る
内容は、パパが外に女を囲っているようなので探ってきてくれないか、とママが言っているのでお願いしたいというものだった
御年76歳のパパの女性問題ですか?などと思いつつ、ウツ病から恢復期にあるミナミはママから探偵料という名目の御小遣いをもらってパパの尾行を始める
パパの行先は住宅地にある一軒の家
そこでは『おしかくさま』を信仰する60歳を越えた女性たちが集まっていて、元高校の国語教師で校長まで努めて退職したパパは、先生という立場で彼女たちから発せられる様々な質問に答えているらしく、ママの言うような女性問題ではなさそう
宗教問題は女性問題よりタチが悪そうですが、パパは沈着冷静に彼女たちに対応していますし、彼女たちもパパに熱心に信仰を勧めているわけでもない 

 

ミナミ、アサミ、アサミの娘・ユウ、パパ、ママ
それぞれの視点で一人称で語られる短い話がテンポよく展開していきます

どこにでもいるような一つの家族の目を通して描かれる2つの大きなテーマ
現代人にとってお金とは?
宗教とは?

 

『おしかくさま』のご本尊はお金、ネット通販で購入する霊験あらたかなお札はただの紙切れ、日本全国すべてのATMでおしかくさまにお参りすることができ、おしかくさまを信仰する人にだけご利益を授ける
大がかりな詐欺なのは明らかですが、本書では、騙す側の云々は描かれていません
大震災後の社会の揺らぎと信仰に飛びつく人々の心の様を、サラリと流しながら、それでも厳しい言葉をミナミに語らせており、読み落とすと勿体ない部分の多い作品ではないかと思いました

 

 


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