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東野圭吾「人魚の眠る家」

2021年06月20日 | は行の作家
幻冬舎文庫
2018年5月 初版発行
2018年9月 5版発行
469頁

離婚を考えていた播磨和昌と薫子に、娘の瑞穂が薫子の母や妹たちと遊びに行っていたプールで溺れたという連絡がきます
病院で医師から伝えられたのは『おそらく脳死』という残酷な現実
一旦は受け入れた2人でしたが、娘との別れの直前に翻意
医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意します

和昌は祖父が起こした会社の三代目社長です
元々は事務機器メーカーだったのを父がコンピューター業界に乗り出し成功
しかし、そのままでは立ち行かないと判断した和昌は5年前に社長に就任してからBMI(ブレーン・マシン・インターフェイス)の研究開発に力を入れるようになりました
脳と機械を信号によって繋ぐことで人間の生活を大きく改善しようとする試みです
この研究成果を使えば脳死と判定された瑞穂の生活を変えることが出来るのではないかと考えた和昌は研究員の星野を在宅介護中の瑞穂の専属に指名します
星野の研究が功を奏し、医師の予想に反して瑞穂は生き続け身体機能も良好なまま時が流れますが…

西島秀俊さんと篠原涼子さん出演の映画を先に観ています
映画では薫子の“狂気”が前面に押し出されていたと感じました
原作の薫子は自分を冷静に見ており、脳死や臓器提供についても多くを学んでいて映画とは違う印象です
薫子が和昌に
「この世には狂ってでも守らなきゃいけないものがある。子供のために狂えるのは母親だけなの。もし生人が同じことになったら、きっとまた私は狂う」と語る件があります
狂うという言葉は使っていてもそこには確かな愛が存在したのです

子を思う親の苦脳や葛藤を描いた物語
エピローグが彼らに優しく寄り添ってくれています


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