文春文庫
1999年 8月 第1刷
2011年 5月 第19刷
解説・松浦寿輝
173頁
短篇集です
1996年、第115回芥川賞受賞作
「蛇を踏む」
藪で蛇を踏んだ若い女性
帰宅すると蛇は「あなたのお母さんよ」と言って料理を作って待っていました
蛇の世界への誘惑に抗いながら何とか自我を確保し自立に向かう女性を描きます
「消える」
家族の誰かが消えても気にすることなく当然の如く暮らす人々
男女の婚姻も家と家の問題として捉えられ、相手が消えればその弟との婚姻が成り立ちます
嫁のストレスが『身体が小さくなってしまう』で表現されているなど、現代の家族模様が寓意的に描かれます
「惜夜記(あたらよき)」
幻想世界と少女とのドッピルゲンガー的な奇譚物語
まるで百閒先生のようだと思いながら読み終えましたら、解説にも『フェミニンな内田百閒とでも言おうか』とありました
川上さんは理学部生物学科卒業とのこと
系統だてて学んだ方だからこその表現力に降参です!
私も以前この本を読んだことがあります。
川上さんの初期の作品で、芥川賞作品ということで、ちょっとハードルが高かったせいもあって、それほどガツンと来なかったかな・・・と、当時思ったものでした。
でも、昔から、川上節っていうか、彼女らしさのある文章は変わってないんだなあ・・・と感じました。
今になって読んで良かったかな、なんて思いました。
受賞当時だったら、多分訳わかんない状態だったと思います。
川上さんや小川洋子さんなど
自分よりかなり年下だろうと思っていた方がほぼ同年代と知った時にはショックでした。いつまでも瑞々しい感性を持ち続ける作家さんたち、素晴らしいです。