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川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」

2020年09月13日 | か行の作家
講談社文庫
2019年10月 第1刷発行
解説・岸本佐知子
406頁

第44回(2016年度)泉鏡花文学賞受賞

遠い未来、衰退の危機を認めた人類は「母」のもと、それぞれの集団どうしを隔離する生活を選びます
異なる集団の人間が交雑することにより、新しい遺伝子を持ち、進化する可能性がある人類の誕生に賭けたのです

14編が収録されており、それぞれ物語と語り手、舞台、時間が違います
なかには緩くリンクしている話もありますが時は大きく隔たり数千年後だったりしてスケールの大きさに度々驚かされました
「母」とはAIを指すようで、今のこの世界は大きな意図のもとに創り出されたシステムによって運営されていることが分ってきます

様々な集団に暮らす人類同士の交雑は避けられず、閉じられた世界の中で独自に幸せに暮らしていくことは不可能です
人間は自分と違うものを許せず、憎むこと、争うことを止められない愚かな生き物であるが故、いつの日か、集団は淘汰され、ひとつになることでしょう
そして、進化した人類は繁栄するのか、はたまた滅亡するのか
その過程において「母」はどの時点でどのような判断を下すのでしょう

川上作品に多い、現実界と異界が交わる物語とは少し違いSFっぽくて新鮮でした
宇宙から地球を俯瞰するような感じで読むと作品の世界にすんなり入っていけると思います


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