河出文庫
1993年5月 初版発行
解説・井辻朱美
148頁
夏休み、子供たちが沈んでいると言われている美しい沼のほとりで祖母とふたりで暮らす従兄の草一を紅於と頬白鳥の兄弟が訪れます
池ではなく蓮の花が咲く美しい沼というところが長野さんらしいです
毎夜、沼へ向かい瑠璃色の水笛を吹く草一
草一の後をつけた紅於が翌朝になり問い詰めますが本人には全く記憶がないようです
健康体の紅於とは違い、虚弱体質で微熱が続く頬白鳥もまた沼の水に強く惹きつけられています
沼の中に沈みたい、草一の手で沈めて欲しいという頬白鳥
静まった沼の上を飛ぶ陶器のような瑠璃色をした鳥を摑まえようとした草一も泥濘の中へ
そして紅於もまた沼のほうへ踏み出していきます
全体が白っぽく湿度の高い日本の夏らしい風景を想像しながら、長野ワールドに浸って読むのをお薦めします
後になって、余計なことに、祖母は一度に3人の孫を亡くしたのかしら、なんて現実的なことを考えてしまいました
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