文春文庫
2012年10月 第1刷
解説・島内景二
298頁
「いのちなりけり」から数年
京・鞍馬に暮らす雨宮蔵人と咲弥、ひとり娘の香也
京の市中から家に向かい鞍馬街道を歩く咲弥の様子から物語は始まります
今年2月、鞍馬寺に行くため出町柳から叡山電鉄に乗った折、車窓から『鞍馬街道』の道路案内標識が見えました
架空の人物ですが、咲弥があの道を300年余の昔に歩いたのだ、と思うとこの物語への期待も増すというものです
それにしても、女性の足で市中から鞍馬まで歩くというのもスゴイです!
さて、今回のお話のメインは忠臣蔵
「乾山晩秋」に少し出てきましたが本作では尾形光琳と赤穂浪士の関わりがさらに具体的に描かれています
他に、権勢を誇った柳沢吉保、赤穂藩の大石蔵之助、綱吉の生母・桂昌院などなど実在した人物に架空の人物雨宮蔵人と咲弥を見事に配置して、史実に物語性を与えていきます
物語の重要なターニングポイントで大きな役割を果たすのが蔵人と咲弥の言葉、特に『和歌』です
三十一文字に込められた思いのやり取りからは和歌の世界の奥深さがよく伝わってきます
勿論、一番忘れてはならないのは蔵人の「天に仕える」という生き方ですね
咲弥と香也を守らんと動く蔵人の活躍もあり、読後感は爽快
現実との違いには目を瞑って、物語を楽しめる一冊でした
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