文藝春秋
2002年10月 第1刷発行
219頁
福岡市、40歳を目前にした永瀬夫妻
妻・春奈が結婚の時に連れてきたマルチーズのチロ
子供のいない二人には大切な家族だったが、ゆうに100歳を越え老衰で息をひきとってしまう
長年一緒に暮らしてきただけに喪失感は大きく、春奈はとうとう寝込んでしまう
ある日、妻からみせられたのは「ふくもクラブ」という団体からの招待状
案内の文章には
「死は深く人を傷つけます。愛する人を失った哀しみは同じ経験がない人には決して理解はできないでしょう。ふくもクラブでは、同じ心の傷を抱いた人々がつどい、互いを癒すセミナーを開催します。ツクヨミの神が見守る蓬萊島の海岸で、きっとあなたも喪った方に出会うことができるでしょう」
とある
永瀬は新興宗教団体の勧誘ではないかと疑うのだが、どうしても行きたいという春奈の付添という立場で一緒にセミナーに参加することにする
それに、初耳だったのだが彼女の曾祖母は蓬萊島の生まれだというのにも興味惹かれるものがあったのだ
セミナーに参加した面々の紹介がてら物語は進みます
宿泊予定のマンションの近くで見た鳶を餌付けしているらしい黒いコートを着た謎の男
セミナーのカウンセラー
何となく胡散臭いような謎めいた展開を見せ
謎の男と参加者の中の一人との意外な関係が判明
さらに、セミナーに参加した女性は皆、蓬萊島に関係があるらしいということがわかる
ふくもクラブの本当の目的は何なのか
永瀬の謎解きはなかなか進みません
満月の夜、ツクヨミの民は死者を迎える儀式を執り行うという
夜中、こっそり儀式をのぞき見した永瀬が見たものは?
春奈やセミナーの参加者たちの心の傷は癒されたのか
この世とあの世
亡くなった人と生きている人
長崎市在住、「原爆」を書き続ける青来さんの死生観がよく出ている作品でした
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