親方日の丸、ナショナルフラッグの名の下
民間企業では有り得ない経営を続ける国民航空
モデルは自ずと知れた、現在経営再建中のJAL
組合の委員長として組織の中で言うべきことを言ったがため左翼分子、アカというレッテルを貼られ、内規を無視した10年の長きに亘り中近東~アフリカの営業所へ流された恩地元
エリートが集まる企業でこのような理不尽な仕打ちが実際に行われている
エリート集団だからこそ、なのでしょうね
母親の死に目にも会えず、妹や妻から転職を勧められても頑として自分の理を通し、単身赴任の孤独に耐え、僻地の営業所でも為すべき事を為す、真面目に勤める恩地と、そんな夫を信じて待ち続けた家族の精神力には恐れ入ります
やっと本社に戻るも閑職に追いやられ、1985年8月12日のジャンボ機墜落事故では遺族係を命ぜられ、混乱の中遺族の世話に追われ、非情な補償交渉の役目まで担うことになる
遺族の慟哭、遺体の状況など読むに堪えない描写が続きます
事故から4ヵ月後、民間から新会長を迎え経営再建を目指す国民航空
恩地は会長室の部長に抜擢され、次々と不正と乱脈が白日の下に明らかになるが利権の闇の中不正疑惑は閣議決定により闇に葬り去られ会長は更迭、恩地には再びナイロビ転勤の辞令が出る
遺族係りとしても、会長室部長としても仕事を全う出来ず、またアフリカに追いやられる恩地のやるせない思いは計り知れないものがあります
度々国民航空の腐敗ぶりが文字に著されますが物語が進むに連れ痛烈な表現になっていきます
本社上層部と政治家との癒着ぶりが忌々しかった
如何に政府出資の特殊法人といえども自ずから節度があるべきであったが、その節度を失いつつある会社の将来を憂えた
トップに都合のいいルールに従わなければ弾き飛ばされ無視されるのが日本の組織社会なのか
航空会社の使命を忘れ贖罪の意識の欠片もない社内の魑魅魍魎の輩を、このままはびこらせてはならない
ニューヨークのブロンクス動物園で見た「鏡の間」
その鏡に映る人間こそこの地上で最も危険で獰猛な動物であるという痛烈な警告であった
国民航空にはびこる権謀術数、私利私欲の集団は、まさに、その警告通りの輩である
会長を辞任に追い込んだのも、再び自分をアフリカに追いやるのも、この獰猛なものたちによる仕業であった
事実を取材して小説的に再構築をした人間ドラマとのこと
まるでノンフィクションであるかのような迫力に圧倒されます
国民航空=JALではない、と度々自分に言い聞かせながら読みました
このような大企業でなくても、社会人として生きている私達に全く無縁の話ではありません
人として、いかに生きるべきか
他人事ではありません
人の命を預かる航空会社として
また多くの従業員とその家族の生活を支える企業として
健全なJALとして再生することを願います
映画は気持ちに余裕のあるときに
DVDで観る予定してます
文章の面白さももちろんですが、
徹底した取材には感服いたします。
最後に「正義は勝つ」と匂わせてるのが
なんというか、ホッとしました。
こういう作家さんの作品を読めるのは幸せなことです