みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0223「先輩の顔」

2018-06-08 18:48:41 | ブログ短編

 香奈(かな)は会社の屋上(おくじょう)の扉(とびら)を開けると、思いっきり伸(の)びをして、声を上げようとして呑(の)み込んだ。手すりの所に、のぞみ先輩(せんぱい)の後ろ姿(すがた)が見えたのだ。しばらく、どうしようかともじもじしていると、先輩の方が気づいてくれた。
「何してるの?」いつもの自信(じしん)に満(み)ちた先輩の声。
 香奈は息抜(いきぬ)きに来たとも言えず、へらへらと笑ってしまう。
「別にいいわよ。ここは、気分転換(きぶんてんかん)には最高(さいこう)の場所だからね」
 先輩は青い空を見上げて大きく息をはいた。香奈は先輩の隣(となり)まで行って、同じように空を見上げてみた。何だか吸(す)い込まれてしまいそうな、そんな青い色をしている。
「あなた、好きな人いるの?」先輩が唐突(とうとつ)に訊(き)いてきた。
 香奈はどぎまぎしてしまった。どう答えればいいのか、思いつかないようだ。
「ほんと、分かりやすい娘(こ)ね」先輩はクスッと笑うと、「大事(だいじ)にしなさいよ」
 香奈は、先輩がなぜそんなことを言ったのか気になった。それで、つい余計(よけい)なことを訊いてしまった。「先輩は、好きな人いるんですか?」
「私?」先輩は一瞬(いっしゅん)考えて、「私は…、今は仕事が恋人(こいびと)かな」いつもと違(ちが)う先輩の顔。
「ところで企画書(きかくしょ)はできたの?」先輩はすぐに仕事の顔に戻ってしまった。
 香奈は緊張(きんちょう)して、「それが、いろいろ考えてるんですが…」曖昧(あいまい)に答えてしまう。
「何してるのよ。私が見てあげるわ。行くわよ」
<つぶやき>厳(きび)しい先輩はいますよね。でも、厳しいだけじゃないんです。優(やさ)しい面も…。
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