みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0221「彼女の悩み」

2018-06-06 18:47:37 | ブログ短編

「うん、鳥山(とりやま)さんの気持ち分かるよ」木村(きむら)は優(やさ)しくささやいた。
 目頭(めがしら)を押(お)さえてうつむいていた彼女は、突然(とつぜん)顔を上げるときつい口調(くちょう)で言った。
「何が分かるの? あなたに、何が分かるって言うのよ!」
 木村は彼女の突然の変貌(へんぼう)に驚(おどろ)き、心の中で呟(つぶや)いた。
<えっ、何で…。女の子って共感(きょうかん)すると、いい感じになるんじゃないの?>
「コラ、木村!」彼女はコップ酒(ざけ)を一気(いっき)に飲み干(ほ)すと、木村の首(くび)に腕(うで)を回してしめ上げた。
「人がしゃべってる時は、ちゃんと聞く。そんなこともできねえのか」
「あの、痛(いた)いです。ちょっと、やめて…」木村は何とか逃(のが)れると、やんわりと言った。
「ちょっと鳥山さん、飲み過ぎたんじゃないかなぁ。もうそろそろ、やめた方が…」
「そうよ。私は飲むとこうなるの。いつも、いつもいつも、これで彼に逃げられるの。だから、飲まないって言ったじゃない。それを、木村! あんたが飲ませたんでしょ」
「だって、そんなこと知らなかったから…」
「私を酔(よ)わせて、どうするつもりだったのよ。はっきり言いなさい。言え!」
「いや、別に僕(ぼく)は何も…」
 彼女は拳(こぶし)を木村の顔の前につき出した。いつものおとなしい彼女は消え失(う)せている。
「あの、ちょっとだけです。ほんのちょっと、いい感じになればなって。ごめんなさい」
<つぶやき>彼女のことを広い心で包んでくれる、そんな人がいつか現れます。たぶん?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする