とある商店街(しょうてんがい)の、日用品(にちようひん)を扱(あつか)っているお店(みせ)。どこにでもあるような小さなお店なのだが、どういうわけか変な噂(うわさ)が広まった。そこへ行くと欲(ほ)しいものが何でも手に入る、と。
「あの、ここに来れば何でも売(う)ってもらえると聞いたんですが?」
「うちには日用品しかないですけど。誰(だれ)から聞いたのか知らないが…」
「私、縫(ぬ)いぐるみが欲しいんです。売って下さい。お金ならいくらでも」
「ちょっと待ってよ。縫いぐるみなんか置いてないから。他の店に行ってよ」
「どこにも売ってないんです。お願いします」
「お願いって言われても、ないものはないんだから」
「カバの縫いぐるみなんです。それも、かかえるくらいすっごく大きなやつで」
「カバ…。カバの縫いぐるみ捜(さが)してるの? 大きなやつねぇ…」
店主はしばらく考えていたが、「うちにあることはあるけど。売りもんじゃないからな」
「あるんですか?」客は小躍(こおど)りして、「ありがとうございます。おいくらですか?」
「だから、売りもんじゃ…」
店主は気がいいので、断(ことわ)りきれなくなってしまった。店の奥(おく)へ行くと、大きなカバの縫いぐるみをかかえて戻(もど)って来て、「こんなんでいいのかい?」
「ああ、これが欲しかったんです。ここへ来てよかったわ。みんなにも教えてあげなきゃ」
<つぶやき>こんな便利(べんり)なお店があると助かるよね。でも、苦労(くろう)して捜すのも醍醐味(だいごみ)です。
Copyright(C)2008- YumenoyaAll Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。