みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0230「耳の虫」

2018-06-15 18:49:23 | ブログ短編

「私の話し、聞いてる?」頼子(よりこ)は不機嫌(ふきげん)そうに言った。
 あかりはキョトンとして、「えっ、なに?」
「もう、ひとが真剣(しんけん)に話してるのに、何で聞いてくれないの?」
「ごめん」あかりは手を合わせると言った。「きっと虫(むし)のせいよ」
 頼子は、またかと思った。あかりはたまに変なことを口走(くちばし)る。今度だって、きっとそうだ。
「ねえ、知ってる」あかりはかまわずに続けた。「耳(みみ)の穴(あな)には、小さな小さな虫が住んでいるの。そいつらのせいで、人の話が聞こえなくなったり、空耳(そらみみ)がしたりするのよ」
「そんなわけないでしょ。絶対(ぜったい)、他のこと考えてただけじゃない」
「そ、そんなことないわよ。別にあたし、彼のことなんか…」
「ほら、やっぱり。どうせ、私より彼の方が大切(たいせつ)なんでしょ」
「もう、そんなことないって。――でもね、耳の虫は本当(ほんとう)にいるのよ」
「いるわけないわ。また、そんな作り話して」
「いるわよ。だって、その虫が教えてくれたのよ。彼と初めて会ったとき、こいつを捕(つか)まえろって聞こえたんだから。あたしは、その言葉通りに彼を捕まえて、今は幸せいっぱい」
「はいはい。もういいわよ。どうせ私は、別れ話でグチャグチャよ」
<つぶやき>身体(からだ)にまつわるいろんな不思議(ふしぎ)、きっといっぱいあるんじゃないでしょうか。
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