みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0231「醜い顔」

2018-06-16 18:49:32 | ブログ短編

「あたしの顔(かお)、変えて下さい」時子(ときこ)は医者(いしゃ)に哀願(あいがん)した。
 彼女の前に座っていた医者は、黙(だま)って彼女を見つめるだけ。彼女はたまらず、
「あたし、先生の噂(うわさ)を聴(き)きました。凄(すご)く腕(うで)のいいお医者さんだって。だから…」
「どういう噂をお聞きになったのか知りませんが、どうもその必要(ひつよう)はないようです」
 時子はキョトンとして、なぜそんなことを言うのか理解(りかい)できなかった。医者は続けた。
「ちゃんと、鼻(はな)も目も口もある。何も不足(ふそく)していない。手を加(くわ)える必要(ひつよう)など…」
「そんな…。あたしは、この顔のせいで苦(くる)しんでいるんです。こんな醜(みにく)い顔…」
「そうですか? 私にはそうは見えませんが。まあ、美人(びじん)とは言えないまでも、そこそこの顔をしておられると思いますよ」
「あなたは、それでも医者ですか? あたしは、この顔のせいで彼氏(かれし)もできないし、仕事(しごと)も他の娘(こ)に持っていかれて。あたし、やりたい仕事もやらせてもらえないんです」
「しかし、それはあなたの顔のせいでしょうか。原因(げんいん)はもっと他にあるかもしれません」
「あたしのこと何も知らないくせに、何でそんなことが言えるんですか?」
「私はいろんな人を見てきましたから。ちょっと目先(めさき)を変えただけで、活(い)き活きと生活(せいかつ)なさっている方を何人も知っています。あなたも生き方を変えてみたらいかがですか?」
<つぶやき>思い込みは視野(しや)を狭(せば)めてしまいます。少し立ち止まって周(まわ)りを見てみましょ。
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