「ねえ、好子(よしこ)。今の、笑(わら)うところじゃないでしょ」
好子は苦(くる)しそうに笑いながら、「フフフ…。だって、おかしいィ」
好子はちょっと変わっている。他の人と笑いの壺(つぼ)が違うのだ。友だちが面白(おもしろ)くて笑っていても、彼女は何が可笑(おか)しいのって顔をする。反対(はんたい)に、みんながしらってしてる時、クスクス、ゲラゲラと笑い出す。そして、みんなからひんしゅくを買うのだ。
「私が真剣(しんけん)に話してるのに、そんなに笑うことないでしょ」
「ハハハ…。だって、ほんと可笑(おか)しいんだもん」
「何が可笑しいのよ。ちゃんと分かるように説明(せつめい)して」
私は、今日は機嫌(きげん)が悪かった。いつもなら、<そうなんだ>ってスルーするのに、今日はそんな気にはならなかった。そんな私を見て、彼女も何か感じたらしく、
「ごめんね。もう笑わないから」好子はフッと息(いき)をはいて真顔(まがお)になる。
「それで、どうしたの? 続きを聞かせてよ」
「もう、いいわよ」私はぷいとそっぽを向く。
「ねえ、気になるじゃない。もう笑わないから。お願い」
「絶対(ぜったい)、笑わない? もし約束(やくそく)破(やぶ)ったら、絶交(ぜっこう)だからね」
彼女を見ると、すでに笑いをこらえるのに四苦八苦(しくはっく)していた。
<つぶやき>人によって笑いの壺って違いますよね。でも、違っていてもいいんじゃない。
Copyright(C)2008- YumenoyaAll Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。