手紙に書かれた住所は合併で変わっていた。
調べて何度か行こうと思ったけど、十五年前の住所にまだ住んでいるとは思えなかったので、眺めるだけにしておいた。
暗い雲がそのまま落ちてきそうな色合いだった。
傘を持って、石飛が時々いる喫茶店を覗いた。
石飛は来ていなかった。中を覗くだけなのは気が引けたので、コーヒーを注文した。
飲みきる前に、雨が降り出した。
手紙のことを石飛に相談してみたかったけど、この雨じゃ来ないだろうなと思った。
カップを置いて、会計をすませ、外へ出ようとしたとき、傘立てにほうりこんだはずの傘がないことに気がついた。
まあいいや。
雨の中を歩いていくことにした。
ぼんやり歩いていて気がつくと、手紙の住所の場所まで来ていた。
あの部屋にはもういないだろうなと思いながら眺めた部屋。
半ばやけになったついでに、インターフォンを押してみることにした。
きっといないだろうけど、何か聞けるかもしれない。
何も聞けないかもしれないけど、何か聞かせてくれそうなひとを教えてくれるかもしれない。
変な人が来たと警察を呼ばれるかもしれないけど、話を聞いてくれる警察官がいるかもしれない。
とにかく、押してみた。
爆弾のスイッチを押すような気持ちって、こんな感じなんだろうか。
「はーい」
ドア越しのくぐもった返事のあと、チェーンをはずす音がし、鍵を開ける音がして、ドアが開いた。
その人はずぶぬれのぼくを見て呆気にとられているようだった。
「……実鳥?」
けれど、一目でぼくの名を呼んだ。
調べて何度か行こうと思ったけど、十五年前の住所にまだ住んでいるとは思えなかったので、眺めるだけにしておいた。
暗い雲がそのまま落ちてきそうな色合いだった。
傘を持って、石飛が時々いる喫茶店を覗いた。
石飛は来ていなかった。中を覗くだけなのは気が引けたので、コーヒーを注文した。
飲みきる前に、雨が降り出した。
手紙のことを石飛に相談してみたかったけど、この雨じゃ来ないだろうなと思った。
カップを置いて、会計をすませ、外へ出ようとしたとき、傘立てにほうりこんだはずの傘がないことに気がついた。
まあいいや。
雨の中を歩いていくことにした。
ぼんやり歩いていて気がつくと、手紙の住所の場所まで来ていた。
あの部屋にはもういないだろうなと思いながら眺めた部屋。
半ばやけになったついでに、インターフォンを押してみることにした。
きっといないだろうけど、何か聞けるかもしれない。
何も聞けないかもしれないけど、何か聞かせてくれそうなひとを教えてくれるかもしれない。
変な人が来たと警察を呼ばれるかもしれないけど、話を聞いてくれる警察官がいるかもしれない。
とにかく、押してみた。
爆弾のスイッチを押すような気持ちって、こんな感じなんだろうか。
「はーい」
ドア越しのくぐもった返事のあと、チェーンをはずす音がし、鍵を開ける音がして、ドアが開いた。
その人はずぶぬれのぼくを見て呆気にとられているようだった。
「……実鳥?」
けれど、一目でぼくの名を呼んだ。