話題のペプシ「コカより美味い」CM、なぜ違法ではない?
意外に緩い比較広告への規制
ビジネスジャーナル
2014年3月18日 00時10分
(2014年3月18日 10時08分 更新)
弁護士法人アヴァンセリーガルグループの執行役員・弁護士で、
企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など
幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、
話題のテーマや身近な紛争事案などについて、
わかりやすく解説します。
スクリーンに「ペプシNEXZERO」「コカ・コーラ ゼロ」と
大きく映し出されたとある記者会見の会場。
壇上の女性が「ペプシ!」と商品名を読み上げると、
青い服を着たペプシ陣営が大喜びし、
スクリーンには「61%、31%」という円グラフが映し出される。
最近、流れている「ペプシNEXZERO」(サントリー)のCMですが、
ライバルである「コカ・コーラ」と比較して
「どちらが美味しいか」を直接的に表現するもので、
最初に見た時はさすがにびっくりしました。
画面下には、小さく「調査をもとにしたCM上の演出です」と
映し出されていますので
現実に行われた記者会見ではないことがわかりますが、
あまりこの手のCM手法に慣れていない我々日本人としては、
戸惑いすら覚えてしまいます。
そこで今回は、こういった「比較広告」が許されるのか、
「景品表示法」上の考え方からひも解いていきたいと思います。
そもそも、商品のキャッチコピーやCM上の表現も、
憲法上の「表現の自由」に該当するものですので、
他社の名誉を棄損したりしない限り、
「違法」とされることはないはずです。
もっとも、景品表示法(景表法)は、
「自社の商品の内容や取引の条件について、
競業他社の商品よりも著しく優れている、
有利である、と誤解されるような表示」を
「不当表示」として禁止していますし、
公正取引委員会は、このような
キャッチコピーなどに対し差し止めなどの
命令を行うことができるとも規定しております。
このような規制があるため、日本では、
競業他社の商品と比較して自社商品をアピールする方法、
いわゆる「比較広告」を
“忌避”する傾向が強かったわけです。
●規制を緩めた行政解釈
しかし、実は、1987年から公表されている
「比較広告に関するガイドライン」では、
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3)比較の方法が公正であること
という3つの要件を満たせば、「比較広告」は違法ではない、
という方針をとっています。いわば、行政の解釈によって、
法律の規制を緩やかにしているわけです。…
したがって、「比較広告」自体が許されないわけではないのです。
例えば、「A社の商品より10%安い」といったものならば、
「値段」の点が事実であれば
(1)と(2)は簡単にクリアできるでしょうし、
後は、比較する商品の内容量、
大きさなどの点で不当なものでなければ
(3)もクリアできるでしょう。
また、「コカ・コーラより美味い」といった
消費者の主観が入るようなものであったとしても、
「100人中、60人の『美味い』という回答による」といった
アンケート調査などに基づいたものであれば、
(1)と(2)はクリアできるでしょうし、
アンケート方法が公正であれば(3)も満たすことでしょう。
さらに、最近では、俳優の堺雅人を起用した
「他社より~」という内容のソフトバンクモバイルのCMが流行っていますが、
このCMも、実験や実証に基づいたものであることから、
「比較広告」として許されているわけです。
なお、「比較広告は欧米ではよく行われている手法である」と
説明されることがありますが、これは間違いです。
確かにアメリカはかなり自由に行われているようですが、
ヨーロッパ諸国では「比較広告に関する指令」などで、
この種の広告は厳しく制限されているようです。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員、弁護士)
●弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、大宮、大阪に拠点を持つ、
法律のスペシャリスト弁護士法人。
特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、
および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。
また、無料法律相談も常時受け付けている。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140318/Bizjournal_201403_post_4405.html?_p=1
意外に緩い比較広告への規制
ビジネスジャーナル
2014年3月18日 00時10分
(2014年3月18日 10時08分 更新)
弁護士法人アヴァンセリーガルグループの執行役員・弁護士で、
企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など
幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、
話題のテーマや身近な紛争事案などについて、
わかりやすく解説します。
スクリーンに「ペプシNEXZERO」「コカ・コーラ ゼロ」と
大きく映し出されたとある記者会見の会場。
壇上の女性が「ペプシ!」と商品名を読み上げると、
青い服を着たペプシ陣営が大喜びし、
スクリーンには「61%、31%」という円グラフが映し出される。
最近、流れている「ペプシNEXZERO」(サントリー)のCMですが、
ライバルである「コカ・コーラ」と比較して
「どちらが美味しいか」を直接的に表現するもので、
最初に見た時はさすがにびっくりしました。
画面下には、小さく「調査をもとにしたCM上の演出です」と
映し出されていますので
現実に行われた記者会見ではないことがわかりますが、
あまりこの手のCM手法に慣れていない我々日本人としては、
戸惑いすら覚えてしまいます。
そこで今回は、こういった「比較広告」が許されるのか、
「景品表示法」上の考え方からひも解いていきたいと思います。
そもそも、商品のキャッチコピーやCM上の表現も、
憲法上の「表現の自由」に該当するものですので、
他社の名誉を棄損したりしない限り、
「違法」とされることはないはずです。
もっとも、景品表示法(景表法)は、
「自社の商品の内容や取引の条件について、
競業他社の商品よりも著しく優れている、
有利である、と誤解されるような表示」を
「不当表示」として禁止していますし、
公正取引委員会は、このような
キャッチコピーなどに対し差し止めなどの
命令を行うことができるとも規定しております。
このような規制があるため、日本では、
競業他社の商品と比較して自社商品をアピールする方法、
いわゆる「比較広告」を
“忌避”する傾向が強かったわけです。
●規制を緩めた行政解釈
しかし、実は、1987年から公表されている
「比較広告に関するガイドライン」では、
(1)比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
(2)実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
(3)比較の方法が公正であること
という3つの要件を満たせば、「比較広告」は違法ではない、
という方針をとっています。いわば、行政の解釈によって、
法律の規制を緩やかにしているわけです。…
したがって、「比較広告」自体が許されないわけではないのです。
例えば、「A社の商品より10%安い」といったものならば、
「値段」の点が事実であれば
(1)と(2)は簡単にクリアできるでしょうし、
後は、比較する商品の内容量、
大きさなどの点で不当なものでなければ
(3)もクリアできるでしょう。
また、「コカ・コーラより美味い」といった
消費者の主観が入るようなものであったとしても、
「100人中、60人の『美味い』という回答による」といった
アンケート調査などに基づいたものであれば、
(1)と(2)はクリアできるでしょうし、
アンケート方法が公正であれば(3)も満たすことでしょう。
さらに、最近では、俳優の堺雅人を起用した
「他社より~」という内容のソフトバンクモバイルのCMが流行っていますが、
このCMも、実験や実証に基づいたものであることから、
「比較広告」として許されているわけです。
なお、「比較広告は欧米ではよく行われている手法である」と
説明されることがありますが、これは間違いです。
確かにアメリカはかなり自由に行われているようですが、
ヨーロッパ諸国では「比較広告に関する指令」などで、
この種の広告は厳しく制限されているようです。
(文=山岸純/弁護士法人アヴァンセリーガルグループ執行役員、弁護士)
●弁護士法人アヴァンセリーガルグループ
東京、大宮、大阪に拠点を持つ、
法律のスペシャリスト弁護士法人。
特に企業法務全般、交通事故・医療過誤等の一般民事事件、
および離婚問題・相続問題等の家事事件に強みを持つ。
また、無料法律相談も常時受け付けている。
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140318/Bizjournal_201403_post_4405.html?_p=1