最近、街を歩いていて思うのは、やはり街に「年寄り」が増えているなということ。ちょっと地方に足を伸ばせば、(例え過疎地域の限界集落などでなくても)通りを行く人は高齢者ばかり。商店街を歩く人もお店の人も、どっちもお年寄りというのは(全国各地で)もはや当たり前の光景です。
私の暮らす東京でも、印象は特に変わりません。交番のおまわりさん(指導員?)や工事現場のガードマン、銀行の窓口の案内係や時に学校の先生まで、街は60代以上と思しきおじさん(やおじいさん)であふれています。
スーパーのレジ係やコンビニの店員さん、ファミレスやファストフードのウエイトレスさんにもかなり年季の入った方々が増え、制服姿でお客様をてきぱきとこなしています。 気が付けば、日本は「働くお年寄りの国」になっている。今、この国を中心になって動かしているのは、(彼ら、彼女ら)60代から70代にかけてのシルバー世代と言えるかもしれません。
現代日本を象徴するこのような状況に関し、4月13日の総合情報サイト「現代ビジネス」が、累計販売9万部超えのベストセラー『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』(坂本貴志著:講談社現代新書)の一部を紹介しているので、参考までにその一部を小欄に残しておきたいと思います。(「70歳以上も働き続ける社会が確実にやってきているという衰退ニッポンの現実」現代ビジネス2023.4.13)
近年、高年齢者の労働参加が急速に進んでいると言われるが、実際、(総務省「国勢調査」によれば)2020年における70歳男性の就業率は45.7%とすでに半数近くの70歳男性は「働き続ける」という選択を行っていると、著者の坂本氏は同書に記しています。
少子高齢化で生産年齢人口が減少する中、高年齢者の労働参加に対する社会的な期待が年々高まっている。近い将来、定年後も働き続けることはますます「当たり前」になっていくだろうというのが氏の認識です。
日本企業において、会社員は65~70歳まで働く人が増える未来は確実にやってくるだろうと氏は言います。2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法では、65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置が企業の努力義務とされた。そしてそれ自体が、雇用であれ業務委託であれ、70歳までの従業員の生活を保障してほしいという、企業に対する政府からの要請だということです。
一方、そうした状況の中で、60代で管理職に就いている人はほとんどいいと氏はしています。部長職の構成比率は、50代前半で26.6%、50代後半で26.9%と50代でピークを打ち、60代前半には8.8%へと一気に減少、60代後半には2.7%までその数を減らすということです。
特に、大企業においては、部長職にまで上り詰めることができる人自体がごく一部。そのごく一部の人も年齢を重ねるなかでその役職から外れていく。課長職ではさらに状況は厳しく、60代前半でその職に就いているのはわずかに2.9%。さらに60代後半では0.5%となり、50代後半以降、多くの人は役職定年や定年を経験して役職をはく奪されると坂本氏は同書に綴っています。
肝心の給与に関しても、定年以降は年齢階層が上がるにつれて所得が徐々に低下していく様子が確認される。実際、60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円前後とされています。
一方、これが60代後半になると、平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がることになる(リクルートワークス「全国就業実態パネル調査」(2019))。定年後は非就業となる人、つまり収入がゼロになる人も多いため、高年齢者全体である程度の収入を得る人は(実際には)極めて少ないのが現実だということです。
65歳、70歳、75歳と歳を重ねれば、自身の健康面や仕事に向かう気力や体力などに変化が訪れる。やっと事業に目途がたったと同時に、その事業の縮小を余儀なくされることも珍しくないと坂本氏はここで指摘しています。
定年後に嘱託やパート・アルバイトといった形で非正規雇用で就業を続けている人でも、歳を取るごとに収入をある程度犠牲にしてでも就業時間を制限し、より無理のない仕事に調整するケースは多いということです。
今後、ますます延長していくと考えられる日本人の就業期間。しかし、(過去からの推移をみても)定年後に高い給与を得る人が急速に増加していくことはこれからも考えにくいというのが坂本氏の見解です。
さて、そうした中ではあるが、定年後の仕事の実態を(ひとりひとり)丹念に調べていくと、浮かび上がってくるのは、定年後の「小さな仕事」を通じて豊かな暮らしを手に入れている人々の姿だと氏はこの著書に記しています。
そして、さらに明らかになるのは、このような定年後の「小さな仕事」が必要不可欠なものとして人々の日々の暮らしの中に埋め込まれており、かつそれが実際に日本経済を支えているという事実だということです。
働き続けられる限りは、相応に働くことに対して努力を惜しまない日本の高齢者たち。年寄りだからといって、元気なのにブラブラしているのは何となく肩身が狭い。日本はやはり「働き者」の国であったということでしょうか。
いつまでも「現役」でいることでプライドを保つシルバー諸氏。多くの人が現役時代から定年後のキャリアに向けた移行期に悩む経験をするが、その転機に向き合うことで、競争に勝ち残り高額の報酬を得ることだけがキャリアの目的ではないことに気づいていくのだろうと綴られた坂本氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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