つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

強制中絶事件―「一人っ子政策」をめぐる最近の出来事

2012-07-01 01:55:36 | 日記
中国では最近、計画出産(「一人っ子政策」)に関連して「安康事件」が話題になっている。
事の起こりは、西安省安康の馮建梅という第二子を妊娠中の7か月の妊婦が、今年(2012年)6月2日に計画出産の担当者から中絶(中国語で「引産」という)を強制された、と家族がネットに投稿したことだ。
規定では妊娠後期の中絶は禁止されており、また農村ではふつう第一子が女児の場合は5年の間隔を開ければ第二子の出産が許可されるため(彼女の娘は5歳になっていた)、これは全く不法な強制中絶だと思われた。馮建梅は二人目の出産が許可されない都市戸籍だったが(夫は農民戸籍)、村に戸籍を移す手続きの途中で事件が起きたなど、状況には複雑なものがあるようだ(中国の計画出産の規定は大変細かく、問題はいつも複雑になる)。担当者が「4万元出せば、中絶しなくてもよいが、びた一文負けてやらない」と言ったが、彼女の家ではそんな大金は用意できなかったという話や、臍の緒や胎盤のついたままの生々しい胎児の写真がネットに出回ったこともあって、事件は大きな反響を呼んだ。
まもなく当局は事情を調査の上、6月後半には担当者7人の処罰が決定し(異例の速さというべきだ)、全国で違法な計画出産の執行がないかの検査も行われることになった。
この間、各種のブログにはさまざまな意見が投稿され、中には「馮建梅は規定を守ってもっと早くに手続きをすればよかったのに、自業自得だ」というような意見もあるが、多くは彼女に同情的で、ネットでは「安康に向かって怒りを吼えよう」という歌も流れた。あるブロガーは、「昔はこういうことはしょっちゅうだった。「人道的」な政策執行を掲げた最近になってもこういうひどいケースが発生するのは驚きだ。以前、自分の村で起きた同様の事件を思い出して心が痛んでしかたない。」と心境をつづっている。
たしかに、私が調査している中でも、日本ではありえない強制中絶が起こっていたという話は耳にしている。近年は、そのようなケースはあまり聞かず、発生した時には今回のように大問題になって当局もすばやく対応するというのは、中国も変わってきたのだろう。問題は、さまざまな意味で日本社会の常識とはことなった前提の中で起こっているのだが、とにかくこのような心痛むケースが起きなくなってほしい。

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