今年の中国風信は本の紹介のシリーズにしようと思っていたのだが、春の出張で乗った高速鉄道が印象的だったので、今回は乗物の話にしよう。
中国の高速鉄道、略して高鉄(ガオティエ)は、2007年に運行開始した新幹線型の和諧号などで、現在では中国大陸を縦横に路線が走っており、今後もどんどん拡大される予定である。
2010年夏、半年前に開通したばかりの武漢-広州線の一部、長沙-岳陽間に乗った時、高速鉄道に肝を抜かれる思いがした。新しい巨大な高鉄専用の長沙南駅には、ほぼ10分ごとに和諧号が発着して、そのどれもに多くの人が乗り降りしていた。一編成で千人以上の人を運べるのだから、すごい輸送量だ。平行して在来線やバスも走っているのだが、どうやら高鉄は割高でもたくさんの乗客を集めているらしい。武漢-広州線は中国南部の人々の出稼ぎルートでもあるが、よりよい生活を求めて出稼ぎに行く人たちは、新奇で近代的な乗り物に積極的に稼ぎを投じるのかと思った。
2013年夏には、岳陽-上海間を6時間で移動した。これは、まず岳陽東-武漢215㎞を南北の武漢-広州線の一部で北上し、ついで東西約850㎞の武漢-上海線に入るのだが、列車を乗り換える必要のない直通だ。1991年に上海から岳陽の150㎞先の長沙まで27時間かかったことを思い出して隔世の観がした。車両は新幹線の普通車に似た二等車と、グリーン車のような一等車で、最近はビジネスシートのある車両もある。各車両では速度計が現在速度を示しているが、おおむね300㎞/hが基準のようだ。
今回は、上海-南京間約300㎞を高鉄で移動した。この区間は毎日100本も走っており、上海虹橋空港を降りて地下鉄で隣の上海虹橋駅から南京南駅まで、最速便は67分である。印象的なのは、上海虹橋駅に切符の自動販売機が何十台も設置されていて、みなほとんど待たずに買っていたことだ。もっとも私は、切符購入に必要なパスポート提示のために窓口に並ぶしかなかったが、自動販売機にIDカード読み取り装置が付いているので、中国人は機械で簡単に切符が買えるのだ。
高速鉄道は建設に巨大な利権を伴うので、鉄道大臣が汚職で摘発されるなどの問題が起こったが、それでも急速に拡大しているのと違って、失敗と言えるだろう乗り物は、リニアモーターカーだ。上海郊外の地下鉄終点から浦東国際空港までのリニアモーターカーは、計画より大幅に遅れて2003年に開業した。世界最速の営業速度430㎞/hで約30㎞を7分20秒で結ぶ。これには一回だけ乗ってみたが、速度計が一瞬400㎞/hを超すのを楽しむ観光用の乗物という感じだった。その後地下鉄が空港まで延びたので、ほとんど使われなくなるのではなかろうか。
昨夏、北京大学にいた時、周りの先生たちは、最近は上海へは飛行機より高速鉄道で行くことが多い、と言っていた。2011年開業の北京-上海間1300㎞余の高速鉄道は約5時間、飛行機なら2時間だが、空港までが遠いし、天候だけでなく政治的軍事的理由で遅れることがしばしばあるので、高鉄の方が確実だという。切符は一等で933元、二等で553元で、飛行機は買い方によるがそれよりやや高い感じか。少し前まで北京-上海は寝台で十数時間かかるので飛行機を使うことが多かったのとはずいぶん様変わりした。
2011年7月に高速鉄道が温州付近で衝突事故を起こして40人の犠牲者を出したことは、まだ記憶に新しい。だからといって高鉄の拡大はとどまるところはないようで、すっかり暮らしに根づいた観がある。たしかに相当に便利で快適なので、安全に運行されることを期待したい。
南京南駅にて
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ずっとブログに更新をさぼっていたのを再開しました。
まずは、この間も『粉体技術』誌に二か月ごとに連載してきた「中国風信」の転載を約二年分。これで(同内容のブログを書いたもの以外)たまった転載は終わったので、次からは新しいものを掲載したらすぐ、転載します。
それ以外の記事も、書けるときには書いていこうと思っています。
中国の高速鉄道、略して高鉄(ガオティエ)は、2007年に運行開始した新幹線型の和諧号などで、現在では中国大陸を縦横に路線が走っており、今後もどんどん拡大される予定である。
2010年夏、半年前に開通したばかりの武漢-広州線の一部、長沙-岳陽間に乗った時、高速鉄道に肝を抜かれる思いがした。新しい巨大な高鉄専用の長沙南駅には、ほぼ10分ごとに和諧号が発着して、そのどれもに多くの人が乗り降りしていた。一編成で千人以上の人を運べるのだから、すごい輸送量だ。平行して在来線やバスも走っているのだが、どうやら高鉄は割高でもたくさんの乗客を集めているらしい。武漢-広州線は中国南部の人々の出稼ぎルートでもあるが、よりよい生活を求めて出稼ぎに行く人たちは、新奇で近代的な乗り物に積極的に稼ぎを投じるのかと思った。
2013年夏には、岳陽-上海間を6時間で移動した。これは、まず岳陽東-武漢215㎞を南北の武漢-広州線の一部で北上し、ついで東西約850㎞の武漢-上海線に入るのだが、列車を乗り換える必要のない直通だ。1991年に上海から岳陽の150㎞先の長沙まで27時間かかったことを思い出して隔世の観がした。車両は新幹線の普通車に似た二等車と、グリーン車のような一等車で、最近はビジネスシートのある車両もある。各車両では速度計が現在速度を示しているが、おおむね300㎞/hが基準のようだ。
今回は、上海-南京間約300㎞を高鉄で移動した。この区間は毎日100本も走っており、上海虹橋空港を降りて地下鉄で隣の上海虹橋駅から南京南駅まで、最速便は67分である。印象的なのは、上海虹橋駅に切符の自動販売機が何十台も設置されていて、みなほとんど待たずに買っていたことだ。もっとも私は、切符購入に必要なパスポート提示のために窓口に並ぶしかなかったが、自動販売機にIDカード読み取り装置が付いているので、中国人は機械で簡単に切符が買えるのだ。
高速鉄道は建設に巨大な利権を伴うので、鉄道大臣が汚職で摘発されるなどの問題が起こったが、それでも急速に拡大しているのと違って、失敗と言えるだろう乗り物は、リニアモーターカーだ。上海郊外の地下鉄終点から浦東国際空港までのリニアモーターカーは、計画より大幅に遅れて2003年に開業した。世界最速の営業速度430㎞/hで約30㎞を7分20秒で結ぶ。これには一回だけ乗ってみたが、速度計が一瞬400㎞/hを超すのを楽しむ観光用の乗物という感じだった。その後地下鉄が空港まで延びたので、ほとんど使われなくなるのではなかろうか。
昨夏、北京大学にいた時、周りの先生たちは、最近は上海へは飛行機より高速鉄道で行くことが多い、と言っていた。2011年開業の北京-上海間1300㎞余の高速鉄道は約5時間、飛行機なら2時間だが、空港までが遠いし、天候だけでなく政治的軍事的理由で遅れることがしばしばあるので、高鉄の方が確実だという。切符は一等で933元、二等で553元で、飛行機は買い方によるがそれよりやや高い感じか。少し前まで北京-上海は寝台で十数時間かかるので飛行機を使うことが多かったのとはずいぶん様変わりした。
2011年7月に高速鉄道が温州付近で衝突事故を起こして40人の犠牲者を出したことは、まだ記憶に新しい。だからといって高鉄の拡大はとどまるところはないようで、すっかり暮らしに根づいた観がある。たしかに相当に便利で快適なので、安全に運行されることを期待したい。
南京南駅にて

ずっとブログに更新をさぼっていたのを再開しました。
まずは、この間も『粉体技術』誌に二か月ごとに連載してきた「中国風信」の転載を約二年分。これで(同内容のブログを書いたもの以外)たまった転載は終わったので、次からは新しいものを掲載したらすぐ、転載します。
それ以外の記事も、書けるときには書いていこうと思っています。
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