オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

月百姿 かしかまし野もせにすたく・・・

2017-06-11 | 月百姿

月岡芳年 月百姿

かしかまし 野もせにすたく虫の音よ

我たになかく ものをこそおもへ』 

「かしかまし 野も狭にすだく虫の音よ 我だになかく 物をこそ思へ」

 

明治二十三年印刷

 

平忠度(たいらのただのり)は平安時代末期の武将、歌人

平忠盛の六男で清盛の腹違いの末弟にあたる。

天養元年(1144年)~元暦元年27日(1184年320日)

 

国立国会図書館デジタルコレクション 018

 

<平家物語・巻第五 富士川>

『薩摩守忠度は・・・』 

頼朝討伐軍の副将である薩摩守忠度は

ある宮腹の女房の許へ通っていましたが

ある夜女房の許にいた時、この女房の部屋に

身分の高い女房が訪ねてきて、夜が更けるまで帰りませんでした

忠度は軒端にたたずんで 扇をぱたぱたと荒く使ったので

女房は「野で虫が鳴いておりますわ」と優しく口ずさむと

忠度はすぐに扇を使うのを止めて帰ってしまいました。

 

身分の高い来客を追い返すわけにもいかず

恋人の忠度をさりげなく帰らせようとした女房と

和歌の知識からその意を汲んだ忠度の恋物語です

 

「源平盛衰記」では 身分の高い女房は

高倉院となっており(こちらが正解かも知れませんが)

源氏物語 夕顔の巻に

『かしかまし 野も狭にすだく虫の音よ 我だに物は言はでこそ思へ』

と出ている歌を 忠度は心得ていた。

忠度が扇を鳴らすのを 女房は虫の音に例えながら

下の句に忠度への思いも託した。

それも忠度はきちんと汲み取った。 とある。

 

『 野原も狭いとばかりに 騒がしく鳴く虫たちです

私さえも 黙って物思いにふけっているのに』