2016.3.19 15:00
【今週の注目記事】北の弾道ミサイル「見失った…」韓国軍の“手抜き防衛”に国民激怒 信じられない軍事力
韓国海軍のイージス艦「世宗大王」。日米のイージス艦との性能の〝格差〟が明らかになった(韓国海軍フェイスブックより)
北朝鮮の弾道ミサイル発射により、韓国軍の信じられない“未熟な軍事力”が明らかになった。北のミサイルの発見・追跡のため飛翔コース近海に派遣されていた韓国海軍の最新鋭イージス艦が、弾道ミサイルを見失っていたのだ。日米の艦船が当然のようにレーダーで追跡するなかの大失態に、韓国では「ヘル朝鮮(韓国を卑下した表現)には答えがない」と諦めの声が広がっている。(岡田敏彦)
レーダー画面から消えた
北朝鮮が事実上の弾道ミサイルを発射した2月7日、韓国海軍は最新鋭イージス艦2隻を派遣していた。韓国紙の中央日報(電子版)によると、午前9時半に発射された北朝鮮のミサイルは、発射6分後に韓国海軍イージス艦のレーダー画面から消えた。
突然の目標ロスト(消失)に、海軍では「弾道ミサイルが空中で爆発し粉々になったのでは」などといった声が飛び交い混乱。急いで米国と日本に情報提供を求めたという。
もちろん、日米のイージス艦は追跡ミッションをトラブルなくこなしていた。官邸の発表では、発射された飛翔体が5つに分離したとしたうえで、うち4つがいつ、どこに落ちたのか、残るひとつ(北朝鮮が人工衛星と称する物体)がどうなったかを全て明らかにしている。韓国海軍は日米の足手まといになっていたのだ。
自慢が砕け散る
韓国のイージス艦だけが低性能だった、というわけではない。イージス艦の“命”は、航空機やミサイルを追跡、ミサイルで迎撃する総合レーダーシステム「SPY-1」だが、これは米国製で、海上自衛隊の艦船も韓国軍の艦船も、米国直輸入品をそのまま搭載している。
韓国軍もこれまで、米国最新鋭の兵器の性能を自慢していた。「1000kmの地域内の弾道ミサイル探知が可能」。「500kmの距離内では千個の目標を同時に追跡できる」。さらには「韓国の最初のイージス駆逐艦『世宗大王(セジョンデワン)』は2012年4月、北朝鮮の長距離ミサイル発射当時、米国と日本よりも速く、発射54秒後に発見、追跡に成功した」。よりによって日米のイージス艦より優秀だとアピールしていた。
こうした自慢話は、2月7日のミサイル発射で粉々に砕け散った。1000kmどころか、高度380kmでミサイルを見失っていたのだから。中央日報は「1隻1兆ウオン(約900億円)のイージス艦は期待はずれだった」と指摘。また、経済が危機的状況で物価高かつ就職難という韓国の世情を「ヘル朝鮮(地獄のような韓国)」と表現する韓国ネットユーザーらは、今回の失敗に「ヘル朝鮮には答え(解決策)がない」と絶望の声をあげている。
韓国の国防部では「推進部分が切り離され、弾頭だけになったためレーダー反射面積が小さく、今回は正確に追跡できなかった」などと説明したが、同じ機材(レーダー)を使う日米の艦船は問題なく追跡できていたのだから、言い訳にならない。原因はレーダー操作員をはじめとした軍人の能力不足にあるのだが、その根底には「そもそも高価なイージス艦は韓国軍に必要だったのか」という重要な問題がある。
目的がない
韓国では現在、イージス艦を3隻保有している。世宗大王と栗谷李珥(ユルゴク・イ・イ)、西●(=がんだれに圭)柳成龍(ソエ・リュ・ソンニョン)で、2008年から12年の間に竣工した。
日本ではこんごう型とあたご型の計6隻を運用。イージス艦を開発した元祖の米国は80隻以上を保有していることを考慮すれば「たった3隻」だが、基本的に沿岸警備が主任務の韓国海軍には過剰な装備だとの指摘は根強くある。
日本は弾道ミサイル(核ミサイル)迎撃という、防衛上の最重要課題をクリアすべくイージス艦を導入してきた。宇宙空間で弾道ミサイルを迎撃するSM-3ミサイルの発射、誘導にはイージス艦が不可欠だからだ。
そして元祖の米国は、原子力空母部隊を敵航空勢力から防衛するためにイージス艦を開発、配備してきた。だが、韓国には日米のような必要性はない。
そもそも北朝鮮が韓国を攻撃する場合、その攻撃ミサイルは宇宙空間を飛ぶ必要など全くない。攻撃目標が近すぎるのだ。
国境地帯から首都ソウルまで約40~50km。ミサイルどころか、「大きな大砲」(200ミリクラスの榴弾砲)の弾が北の国境から首都ソウルに届く。だからこそ、韓国海軍には宇宙を飛ぶ弾道ミサイルを撃墜可能なSM-3ミサイルの導入意志も計画もない。
韓国のイージス艦の搭載する迎撃ミサイル「SM-2」は射程約160kmと敵の戦闘機や攻撃機を迎撃するためのもので、弾道ミサイルを撃ち落とす能力は持っていない。つまり韓国のイージス艦は、敵の弾道ミサイルには全く手が出せず「見てるだけ」の存在なのだ。
一方で、米軍のように守るべき空母機動部隊を持っているわけではない。あるのは故障続きでまともに動かない揚陸艦「独島」と、時代遅れの駆逐艦など貧弱な「沿岸海軍」だけだ。
訓練の重要性
海上自衛隊ではイージス艦4隻が、米国が40回に渡って実施したSM-3発射実験に参加し、実際に模擬弾道弾を迎撃している。それなりの経費を費やし、厳しい訓練を重ねているのだ。
一方の韓国海軍は発射実験どころか、SM-3を持ってもいない。さしたる必要性もなく、見栄で仕入れたイージス艦では、手に余すのも当然なのだ。結果、演習でのSM-2ミサイルの発射すら2010年から失敗に次ぐ失敗で、目標と正反対の方向へミサイルが突進するなど最新兵器にありえない事態が続発。敵魚雷をだます「おとり魚雷」は、さび付いて発射できなくなっていたことがわかり大問題に。艦首ソナーのカバーも不良品で、海の浮遊物に当たるだけで破損するという信じがたい性能も明らかになっている。
韓国イージス艦は、SPY-1システムこそ米国謹製だが、船体は韓国製だ。さらに乗組員も日米並の弾道ミサイル対処訓練など体験したことがない。艦の能力とは、人の能力を抜きにしては語れないのだ。
北朝鮮と戦争中なのは、朝鮮戦争で休戦協定に調印していないのは、いったいどこの国なのか-。韓国と軍がそれを自覚して適切な行動を取らないなら、関係各国には客観的な判断が求められる。ナポレオンいわく「真に恐れるべきは、有能な敵ではなく、無能な味方である」(3月14日掲載