ヤマダ電、安売り路線が招いた逆回転
証券部 山田航平
記者の目
2018/11/1 5:30
ヤマダ電機が苦境に立たされている。2019年3月期の連結純利益は前期に比べ約半分に落ち込む見通し。猛暑や買い替えサイクルの到来で同業他社が堅調な中で1人負けの状況だ。米アマゾン・ドット・コムをはじめとしたインターネット通販の隆盛で、得意としてきた大量仕入れ大量販売による安売り路線が行き詰まっている。力を入れる住宅関連との連携で立て直しを目指すが、光明はまだ見えていない。
ヤマダ電機の株価
18日に発表した19年3月期見通しの下方修正。前期に続く期中の大幅下方修正に、株式市場では「またか」との声が漏れた。失望感が広がり、19日の株価は一時前日比9%安まで売られた。
ヤマダ電は住環境サービスを提供する新業態店への改装を進めている(神奈川県の店舗)
主因は家電販売の落ち込みだ。アマゾンや楽天などネット通販の市場規模は16兆円まで拡大。6年間で約2倍になっている。ただネット通販の攻勢を受けるのは、すべての家電量販店に共通する。すでに18年4~9月期決算を発表したノジマとエディオンが2桁増益を確保している中で、ヤマダ電だけが苦しむのは同社のビジネスモデルが背景にある。
メーカーから商品を大量に仕入れ、販売報奨金も含めた規模の利益を生かして低価格で消費者に提供するのがヤマダ電の強みだった。それが実店舗での家電販売市場がネット通販に奪われる中、ヤマダ電の売上高はピークだった11年3月期から7年間で27%減った。それでも調達費を抑えるために仕入れる量を減らさなかったことで、今度は在庫が膨らむようになった。
売上高が在庫の何倍かを示す棚卸し資産回転率は11年3月期は13倍と同業のケーズホールディングス(8倍)、ノジマ(10倍)を上回っていたが、18年3月期は4倍まで低下し、ケーズHD(5倍)、ノジマ(12倍)を下回るようになった。棚卸し資産回転日数をみると11年3月期の27日から88日まで悪化。11年3月期は仕入れてから1カ月以内に売り切っていたのが、3カ月近くかかるようになった計算だ。
その間にメーカー側も採算重視にかじを切り、「2~3年前から量販店に対して量よりも質を重視するようになった」(SBI証券の和泉美治氏)ため、販売報奨金も減少した。規模の利益を生かした仕入れ手法ができなくなり、「価格優位性を強みとしていた分、客離れが起きやすい」(外資系証券)という悪循環に陥っている。
打開策として取り組む住環境事業も伸び悩んでいる。17年から1500坪(約5000平方メートル)以上の既存店でリフォームの相談窓口なども設ける新業態店「家電住まいる館」への改装を進める。「立地や業態ごとに最適な売り場構成を探っている最中」(岡本潤取締役)で、ソファとテレビをセットで売るなど一体型の提案を増やす見込みだ。「改装後の店舗では家電販売も伸びている」(山田昇会長)というが、今期100店の改装を掲げた期初計画の進捗率は5割以下にとどまる。
住宅事業はまだ売上高の1割にとどまる。6割を超える家電販売の先行きが不透明だと、市場の評価は高まらない。山田会長の言葉とは異なり、「購買頻度の低い住宅と家電量販店の相性は悪い」(国内証券)との声も聞かれる。20年3月期に純利益600億円を目指す中期経営計画の達成も難しくなる中、1日の決算発表で家電の立て直しと住宅との相乗効果など具体策を市場にどう説明するかが問われることになる。
証券部 山田航平
記者の目
2018/11/1 5:30
ヤマダ電機が苦境に立たされている。2019年3月期の連結純利益は前期に比べ約半分に落ち込む見通し。猛暑や買い替えサイクルの到来で同業他社が堅調な中で1人負けの状況だ。米アマゾン・ドット・コムをはじめとしたインターネット通販の隆盛で、得意としてきた大量仕入れ大量販売による安売り路線が行き詰まっている。力を入れる住宅関連との連携で立て直しを目指すが、光明はまだ見えていない。
ヤマダ電機の株価
18日に発表した19年3月期見通しの下方修正。前期に続く期中の大幅下方修正に、株式市場では「またか」との声が漏れた。失望感が広がり、19日の株価は一時前日比9%安まで売られた。
ヤマダ電は住環境サービスを提供する新業態店への改装を進めている(神奈川県の店舗)
主因は家電販売の落ち込みだ。アマゾンや楽天などネット通販の市場規模は16兆円まで拡大。6年間で約2倍になっている。ただネット通販の攻勢を受けるのは、すべての家電量販店に共通する。すでに18年4~9月期決算を発表したノジマとエディオンが2桁増益を確保している中で、ヤマダ電だけが苦しむのは同社のビジネスモデルが背景にある。
メーカーから商品を大量に仕入れ、販売報奨金も含めた規模の利益を生かして低価格で消費者に提供するのがヤマダ電の強みだった。それが実店舗での家電販売市場がネット通販に奪われる中、ヤマダ電の売上高はピークだった11年3月期から7年間で27%減った。それでも調達費を抑えるために仕入れる量を減らさなかったことで、今度は在庫が膨らむようになった。
売上高が在庫の何倍かを示す棚卸し資産回転率は11年3月期は13倍と同業のケーズホールディングス(8倍)、ノジマ(10倍)を上回っていたが、18年3月期は4倍まで低下し、ケーズHD(5倍)、ノジマ(12倍)を下回るようになった。棚卸し資産回転日数をみると11年3月期の27日から88日まで悪化。11年3月期は仕入れてから1カ月以内に売り切っていたのが、3カ月近くかかるようになった計算だ。
その間にメーカー側も採算重視にかじを切り、「2~3年前から量販店に対して量よりも質を重視するようになった」(SBI証券の和泉美治氏)ため、販売報奨金も減少した。規模の利益を生かした仕入れ手法ができなくなり、「価格優位性を強みとしていた分、客離れが起きやすい」(外資系証券)という悪循環に陥っている。
打開策として取り組む住環境事業も伸び悩んでいる。17年から1500坪(約5000平方メートル)以上の既存店でリフォームの相談窓口なども設ける新業態店「家電住まいる館」への改装を進める。「立地や業態ごとに最適な売り場構成を探っている最中」(岡本潤取締役)で、ソファとテレビをセットで売るなど一体型の提案を増やす見込みだ。「改装後の店舗では家電販売も伸びている」(山田昇会長)というが、今期100店の改装を掲げた期初計画の進捗率は5割以下にとどまる。
住宅事業はまだ売上高の1割にとどまる。6割を超える家電販売の先行きが不透明だと、市場の評価は高まらない。山田会長の言葉とは異なり、「購買頻度の低い住宅と家電量販店の相性は悪い」(国内証券)との声も聞かれる。20年3月期に純利益600億円を目指す中期経営計画の達成も難しくなる中、1日の決算発表で家電の立て直しと住宅との相乗効果など具体策を市場にどう説明するかが問われることになる。