ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

ボリショイ ロンドン公演 8月10日 ドン・キ  

2007年08月15日 | Weblog

英国特派員Kさんより同じく8月10日のドンキに関して寄稿頂きました。そして写真は主演フィーリンとのTwo Shot。

Kさん素晴らしい観劇記ありがとうございました。

8月10日「ドン・キホーテ」

 舞台芸術の醍醐味を堪能させてもらった一 夜でした。そして、舞台は生き物であること、ダンサーも生身の人間であること、舞台は出演者と観客双方が作り上げていくものであることを再認識させられた公演でもありました。


キトリのアレクサンドロワとバジルのフィーリンは、登場の瞬間から愛し合う恋人同士。男気たっぷりで町一番の色男と、その色男の恋人が他の娘に秋波を送るのは気に入らないが、自分にぞっこんなの は十分心得ている、これまた艶やかないい女。二人ともキトリとバジルとして 舞台で息づいており、その演技を通して彼ら自身が舞台を十分に楽しんでいる ことが伝わってきました。


この夜素晴らしかったのは主役の二人だけでは ありません。マント捌きも鮮やかな、華麗で熱いエスパダのメルクリエフ。そ のエスパダの心を更に熱くさせる、なまめかしい町の踊り子、ヤツェンコ。流 れ者の哀感が体中からほとばしるジプシー女のマハルシャンツ。若さと人生を 謳歌する可憐なキトリの友人たち。気だるい南国の夏の夜の酒場の女たち・・ ・。皆、確実な技術の上に、それを誇示することもなく役柄を作り上げ、舞台 は高揚感に満ちていました。


にもかかわらず、観客は初め、冷ややかでした。「ブラボー」の声もほとんどかからず、拍手も礼儀でしている程度。このような気のない反応は確実に出演者にも影響を与え、舞台上に満ち溢れる南国の陽光にやや影がさしたかのように感じられました。

フィーリンが珍しくも三幕初めにサポートミスをしたので、この観客の反応と何か関係があるのか、などと思ってしまったほどです。


ところが、三幕のキトリとバジルのパ・ド ・ドゥが始まったあたりから観客も熱を帯び始め、それはキトリのフェッテで 最高潮に達し、その後はただひたすら大喝采。これは一体どうしたことなので しょう。それまでの出来がよくなかったわけではありません。この夜は皆、幕 開けから素晴らしかったのです。


カーテンコールで、惜しみない喝采を全 身で受け止めるかのように胸に手を当て、観客に応えるフィーリンの姿が印象 的でした。そして、オーケストラを讃え、楽団員に向かって「スパシーバ(あ りがとう)」と言ったアレクサンドロワの満面の笑顔! 

舞台っていいな、と 思った瞬間でした。



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