Nさんより新国立劇場バレエ団『アンナ・カレーニナ』2012年3月16日(金)の
寄稿頂きました。
今回もダンサー達の迫力に圧倒されたとのことです。
写真は劇場入り口のポスターです。
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新国立劇場バレエ団『アンナ・カレーニナ』2012年3月16日(金)
19時開演
アンナ:厚木三杏
カレーニン:山本隆之
ヴロンスキー:貝川鐵夫
キティ:本島美和
2010年劇場初演を鑑賞して大きな衝撃を受けた
ボリス・エイフマン振付『アンナ・カレーニナ』待望の再演に
足を運んだ。
厚木さんのアンナは前回以上に情熱と緊迫感に満ち、
華奢な肢体からおぞましいほどの情念を迸らせるヒロインであった。
ダンサーの中でも特に細身であるが軟弱さは皆無で、
身体がいつ壊れてもおかしくない激しい振付を
エネルギーを切らすことなく熱演して見事であった。
揺れ動く心の表現がより繊細になっていたことも印象深い。、
カレーニンとヴロンスキーの間で引き裂かれるような葛藤を
じわじわと漂わせ、
しかしながら息子への思いは変わらず
セリョージャと離れ離れになりたくないという嘆きが
痛々しく胸に響いた。
山本さんのカレーニンは渋く抑制の効いた、
尚且つ思慮深さのある魅力的な男性であった。
心から愛するアンナに拒絶されながらも
深く優しい愛情を捧げる姿があまり切なく、胸を打つものがあった。
葛藤するアンナの心が少しずつ解きほぐされていくことにも納得がいく。
ときに激しく迫る場面においても凄みの中に慈悲深さが垣間見え、
アンナを愛するが故であることに説得力があった。
なぜアンナが夫を捨てたのか不思議に思えたほどである。
アンナとヴロンスキーが惹かれ合う姿を目にしたときは
哀愁を帯びた音楽と呼応しながら
その立ち姿だけでカレーニンの複雑な心情が伝わった。
ここまで佇いだけでも物語り、
観る者に訴えかけることができるダンサーは
そうお目に掛かれないであろう。
ついにアンナがヴロンスキーを選び
悲しみに暮れるソロでは重厚な低音に絡むように
身体の奥底からやり場のない怒りや悲哀が湧き上がり、
心を締め付けられずにはいられなかった。
サポートも盤石で、
重心の保ち方が難しそうな片手リフトや
アンナを勢い良く放り投げるような技も安定感抜群であった。
また群舞を従えてのスピード感と鋭さのある踊りにも魅了された。
貝川さんのヴロンスキーは
柔らかで爽やかな風情のある好青年、
時計の針の如く単調な生活に飽きてしまったアンナにとって
鮮烈な印象を抱かせたことであろう。
前回はもう気持ち気迫や強引さが加わればとの感想を持ったが、
今回はそういった要素も感じさせた。
そして忘れてならないのは群舞の完成度の高さである。
捻りをきかせた複雑でアクロバティックな技を次々と繰り出し、
圧倒されるばかりであった。
ただ整然と踊るだけでなく、
華やかな舞踏会の客ともなれば、男女ともレオタード姿になって
阿片を吸引したアンナの幻覚をも表現する。
更にはアンナが身を投げる機関車をも
黒の衣装をまとって踊りで作り上げる。
中でも圧巻なのは、
不倫関係となったアンナとヴロンスキーを受け入れない社会を
表現する場面だ。
『悲愴』の躍動感溢れる旋律に乗せて男女のペアが絶え間なく踊り続ける。
隊形を変えながらアンナに迫っていく振付も面白い。
また哀愁を帯びたチャイコフスキーの音楽の数々が作品をよりドラマティックに彩り、
心に染み入る。
チャイコフスキーの魅力を再発見できるであろう。
明日昼公演は前回恐るべき身体能力で驚愕させた
エイフマン・バレエのゲスト陣、
夜公演は初役の長田佳世さん、マイレン・トレウバエフさん、厚地康雄さん組である。
それぞれ全く異なる個性を持つダンサー達が作り上げる舞台が
今から楽しみである
本日、「アンナ・カレーニナ」を観に行きますので、益々楽しみになりました。
ありがとうございました。
このたびもお読みいただき
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本日、是非お楽しみくださいね。
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