それまでで一番手応えがあった。
バドミントンのラケットが弾いた白い羽根は、夏空に高くたかく飛び上がっていった。
降下に入った時、左から吹いてきた風にそれは突然軌道を変え、街路樹のほぼてっぺんにスポッと納まった。
道路を挟んだ二階建てのペンションの屋根を遥かに越える高さだった。
枝を揺することもできず、わたしはただあっけにとられて、またすぐ風で落ちてくるんじゃないかと消えていった先の緑の重なりを見上げていた。
けれど、それきりだった。
どうしようどうしよう、と思っていると、兄が「ああ、しょうがないよ」と言って、ペンションの入り口に置いてある羽根をもう一つもらってきて、わたしたちはまた羽根つきを再開した。
街路樹を避けて、小さな弧を描くように気をつけて。
でもそれは、さっきまでのように、のびのびと楽しいものではなかった。
じきに部屋の用意が整ったので、わたしは少しほっとして室内に入った。
ロビーの窓から、さっきの大きな木が見えた。 葉っぱが風にそよいでいた。
その晩、 顔にできたニキビみたいに、そこに吸い込まれた羽根のことが気にかかっていた。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/