長崎乱楽坂 by吉田修一

2008年09月15日 | 読書
祖父と祖母の時代は普通の家だった。
長男の叔父がヤクザの世界に入り、
次男もその世界へ、
家の中には絶えず荒くれ男が出入りして、
やくざの溜り場に。
その家の長女である駿の母親も、荒くれ男の集団に違和感なく溶け込んでいた。
駿と悠太の兄弟はそんな荒れた家に育った。

母屋の離れには兄弟の中では異質の三男が、首を吊って死んでいた。
駿はその離れを好み、叔父の幽霊と子供の頃から会話をしていた。

二人の母はあろうことか、ある日子供を捨てて、
荒くれ男の一人と、神戸へと旅立ってしまう。
男は神戸のその世界で頭角を現し、出世をする。
しかし、あるときホテルで鉄砲玉に殺害される。母は失意のどん底に落ちる。

そんな中でも、駿の人生は、ガソリンスタンドでアルバイトをしながら、
真っ当に進みかけていた。好きな相手が出来て、
周りに惜しまれながら東京へ出て行く予定にもなっていた。
しかし、傷心の母が帰ってきた時、無気力な世界へと後退してしまう。

悠太の方は、高校を卒業すると東京の大学に進む。
小さい頃から面倒を見てくれた祖母が死に、
葬儀に戻って来た折、離れが火事になる。
救いのないまま、物語はあとの展開を予想できないまま終っている。

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