感染撲滅という正しさが生む村八分<磯野真穂さんの警鐘>

2020年05月10日 | 時事問題
感染撲滅という正しさが生む村八分 <磯野真穂さんの警鐘>
2020年5月8日 朝日新聞 記事抜粋

◆「新型コロナウイルスに、絶対に感染してはならない」――。
いま、誰もがそう思っている。自分がつらいから、だけではない。
周囲の人に感染を広げてしまうかもしれないからだ。
だが、医療人類学者の磯野真穂さんは、
そんな道徳的な思考が「正しさ」として社会を覆うことに警鐘を鳴らす。

◆「『感染者を救うため、頑張ってください。応援しています』とエールを送りながら、
『でも濃厚接触者のあなたは私のテリトリーには入らないでください』と表明する。
『あなたの無責任な行動が医療崩壊を招き、死者を増やす』と呼びかけ、
個々人に危機感と責任感を植え付けて思考と行動の変容を促す方法が怖いのは、
まさにこの点です。自分や他人を監視しあう社会を生むのもさることながら、
自分や自集団が感染しないために、感染リスクの高い人や集団を排除するという判断を、
いやが応でも生むことにつながります」

◆「今、考えるべきなのは、
『感染拡大を抑制さえすれば社会は平和なのか』ということではないでしょうか。
私はすでに、この方向性がもたらすマイナスの側面の影響が大きくなっていると考えています。
感染拡大だけでなく、人間の『命』にとってのさまざまなリスクを考慮して、
政策を決めていく段階に来ていると思います」


<磯野真穂さんの著書>
◆医療者が語る答えなき世界 ──「いのちの守り人」の人類学 (ちくま新書)
私たちは病院に、答えを得るために足を運ぶ。
心身の不調の原因が明らかになり、それを取り去るすべが見つかることを期待する。
しかし実際の医療現場は、私たちが思う以上のあいまいさに満ちており、
期待した答えが得られない場合も多い。
そんな時私たちは、医療者に失望するが、それは医療者も同様に悩み、考えるときでもある。
本書は、医療者のそんな側面を、本人たちへのインタビューをもとに紹介する。
病気になったとき、私たちは医療者とともにいかに歩むことができるのか。
かれらの語りを通じて考えてほしい。 

<プロフィール>
◆人がわからない未来を前にどう生きるのか、に関心を持っています。
人類学の魅力を学問の外に開きたい。
国際医療福祉大学大学院准教授を経て2020年4月より独立しました。
研究者としての所属は慶應大学大学院です

◆(略歴)
1999年、早稲田大学人間科学部スポーツ科学科卒。
オレゴン州立大学応用人類学修士課程修了後、
早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。

(HP )https://www.mahoisono.com
(研究業績)https://researchmap.jp/mahoisono
(twitter)@mahoisono

2 コメント

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怖いです (きりぎりす)
2020-05-11 07:01:39
監視社会。
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怖いですね (健人)
2020-05-11 11:06:52
自分が周りに監視され排除され、
自分も周りを監視して排除する。
為政者の思うつぼですね。
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