The Hammer and the Danceとは(山中伸弥教授の情報より)

2020年05月10日 | 時事問題
~「解決すべき課題」から転載~
【The Hammer and the Danceとは】
緊急事態宣言の延長が安倍首相から発表された後、
西村経済再生大臣の会見で”The Hammer and the Dance"という概念が紹介されました。
これが、日本の対策の基本方針であると理解しました。

The Hammer and the Danceは、3月末にTomas Pueyo氏により提唱されました。
彼は、新型コロナウイルスの急激な感染増加は医療崩壊をもたらすことから、
一日も早くLockdownのような強力な対策で
感染者数を徹底的に減らすことが必要と強調しています。
ハンマーで叩きのめすイメージでこの強力な対策を”The Hammer"と呼んでいます。
しかし感染がいったん収束しても、
対策を緩めすぎると再び感染者が急増する危険があります。

しかし彼は、最初のHammerで時間を稼ぐことにより、
様々な備えをすることができ、第2波を防ぐことが出来ると提唱しています。
様々な備えには、
・徹底的な検査と隔離
・医療体制の整備(ICUベッドの増床、N95マスクや防御着の確保)
・治療薬やワクチンの開発
・人の行動変容(物理的距離をとる)
が含まれます。

これらの対策を取ることにより、ウイルスとの共存が可能となります。
この時期を、ウイルスとダンスを踊るようなイメージで”The Dance"と呼んでいます。
The Hammerの段階で感染者を減らせば減らすほど、次のThe Danceの対策が楽になります。
緊急事態宣言の延長が決まったのは、
Hammerによる対策がもうしばらくは必要と判断されたのではと、推察します。

Tomas Pueyoが対策を決定する指標として重視しているのが実効再生産数(R)です。
一人の感染者が何人に感染させるかという数値です。
対策を行わないと、新型コロナウイルスのRは2.5程度であると考えられています。
5日程度で次の人に感染させることがわかっていますので、
5日ごとに2.5倍ずつ、対数的に感染者が急増することになります。

The Hammerの段階では、Rを0.5程度まで下げて、
感染者を出来うる限り減らすことが必要です。
2.5を0.5に減らすためには、
人と人の接触を0.5/2.5=0.2、すなわち80%以上減らす必要があります。
一方、The Danceの段階では
Rを1弱(1は超えない)に抑える範囲で、経済活動を再開する必要があります。
さもなければ、医療崩壊は防ぐことが出来ても、経済が崩壊します。
Rを1未満にするためには、
1/2.5=0.4、すなわち60%以上、人と人の接触を減らす必要があります。
80%減と60%減では大きな違いです。

しかし、緊急事態宣言が解除されても、決して元通りにはならない、
正常の60%以上、人と人との接触を減らす努力は長期間(おそらく1年以上)必要であることを、
The Hammer and the Dance理論は訴えています。



【HPの最初の言葉・・・3月末のページ開設から変わりません!】
新型コロナウイルスへの対策は長いマラソンです。
都市部で市中感染が広がり、しばらくは全力疾走に近い努力が必要です。
また、その後の持久走への準備も大切です。
感染が拡大していない地域も、先手の対策が重要です。
私たちが一致団結して正しい行動を粘り強く続ければ、
ウイルスの勢いが弱まり、共存が可能となります。
自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守りましょう!

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