グラスホッパー

2009年05月17日 | 読書
小説の構造が分かりやすく、
どんどん先へ先へと読み進まざるを得ず、、
引きずり込まれるように結末に引っ張り込まれてゆく。

一言で表現すると面白い小説。
ストーリーテリングが上手いという事なのか。
天性のお話作り上手なのだろう。

死神も面白かったが、各種殺し屋さんもなかなか。
現実にいてもらったら恐怖でしかないが、
お話だから面白い。

鈴木、鯨、蝉の3人が交互に一人称で物語る。
はじめはバラバラの話だが、徐々に関連付けられてゆく。
おしまいのスッキリ感こそが小説読み切りの楽しさ、
読み甲斐とでもいういうもの。
出会えて良かったという満足感。

鈴木・・・奥さんを寺原息子に殺された元教師。
寺原の会社”令嬢”にもぐりこみ、
復讐の機会を窺いながら、手先を務める。
鈴木は上司的存在の比与子に疑われ、
軽い調子のカップルを殺せなどと迫られる。

そんなタイミングの時、鈴木と比与子は、偶然、
寺原息子が交通事故に遭うのを目撃する。
鈴木は比与子に命じられ、犯人らしき人物を尾行し、
「押し屋」の住まいを突き止める。

そこは幼い息子二人と、若々しい母親と、SEの父親、
4人家族が住むアットホームな家庭ではあったが、
鈴木は家庭教師に雇って欲しいと頼み込む。
長男とサッカーに興じ、次男にも好かれ、
両親から家庭教師に採用されそうに進んで行くが・・・。

同時進行で、「自殺屋・鯨」は、依頼の仕事を遂行し、
ターゲットをビルから落下させる。
その後も仕事を進める中で、
自分の稼業にケリを付けるために
「押し屋」に遭わねばならないと動いてゆく。

また、ほぼ同時進行で「ナイフの達人・蝉」も
水戸で一家惨殺を実行。
意気揚々だが、上司(指示者)岩西に対する不満がたまる。
さらに仕事を進める中で、
やはり、「押し屋」との出会いに向かってゆく。

それぞれの話がそれぞれの進展を積み重ねながら、
残忍で怖い話しながらも、現実とは遊離しているので、
コミカルな感じを維持しつつ、先へ先へとすすむ。

現実に忠実であるよりも、
こんなファンタジックな要素がふくらんで行く話が、
まさに小説として楽しいと感じます。僕は。

「押し屋」さんは
他の三人とはちょっと違った扱いをされている登場人物。
一人称で心の動きなどを書かれないので、
謎のままで、最後まで進んで行き、
謎のままにお話は終ってしまうが、
このあたりは余韻と言うものか。

エンディングで、鈴木は「押し屋」の息子役の二人を、
駅の向かいのホームで見かけ、二人に話しかけたいのだが、
両者の間に入ってきた列車に姿はかき消される。
そして列車は延々と通過し、流れが止まらない・・・。


コメントを投稿