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今回も二回に分けて結果発表。
大雨、猛暑。
自然も手に負えない状態。
国の問題も世界の問題も・・・。
もう自分たちではどうにできないのではないかと無力感に襲われる。
それでも立秋はやってきた。
素直に秋に向き合うことができたらと思う。
★結果★
懸崖を鹿の子径なき径を行く 仙翁
○(幹夫)子鹿が行く径なき径と言えば、源氏と平家の戦「一の谷合戦」源義経が「ひよどり越えの逆落とし」で発した「鹿は四足、馬も四足。鹿が通って、馬が通れぬはずはない。」の言を思い浮かべました。
〇(あき子)懸崖の一言で背景がくっきりして、鹿の子の動きが見えるようです。
◯(道人)リアルな句。こういう景が日常の暮しとは羨ましい。
タガメ棲む池畔帰省に甦る 藤三彩
八朔の雲いきいきと海の上 アネモネ
◯(ルカ)ぐんぐん大きな夏の雲が見えてきます。
〇(まきえっと)気持ちのよい一句です。
○(敏)雲の形ではなく雲の生態を「いきいき」と表現したところに瞠目しました。
○(ちせい)雲の峰、青い海、埠頭を渡る風などを思いました。
片陰もなき塹壕を掘る兵士 幹夫
〇(瞳人)実感はもうひとつか
◎(卯平)今の世界情勢とも言えるし、先ほどの大戦を経験した作者の作とも言える。前者であればテレビ俳句で単なる報告の範疇を出ていない。しかし後者の景とすれば、南方戦線での経験から得た景で八月十五日を意識した作であろう。この場合兵士が作者であれば、南方戦線で何も考えず上司に従わざるを得なかった自分の姿を客観視しているとも言える。後者の鑑賞を得るなら今回の句会で最もインパクトのある句。
(選外)(道人)兵士の描写が中々。かつての日本軍であり、今のウクライナ戦争の兵士。
ふるさとは緑の山河迎え盆 敏
○(泉)正に日本の原風景です。
○(アネモネ)「迎え盆」いいですね。
〇(藤三彩)なかなか帰省できないのだが旧盆への思いは変わらない
◎(瞳人)赤字だって走らせるから国鉄でした
〇(まきえっと)日本の国土の約73%を山地が占めていると言われていますね。「迎え盆」がいいですね。
空梅雨や実家の見えるダムの底 泉
〇(藤三彩)どこぞのダムからは車が出てきたとか
〇(瞳人)壊れないで残っていますか
〇(まきえっと)渇水で底が見えたのでしょうか?実家が見えたのは少し寂しさを感じます。
◎(餡子)ダムの底に沈んだが干上がって見えて来た村の光景。それも実家が。せつないですね。生活が分かるような村の昔のままをテレビで見たときのショックはよく覚えています。
○(アダー女)神奈川県の宮ヶ瀬湖に実家が沈んでいるという知人がいます。空梅雨で水位が下がり、懐かしい風景が現れてきたら苦しくなるような切ない気持ちになるでしょうね。何十年くらい残っているのだろうかとか、そんなこと考えるより、沈んでいる実家への鎮魂歌としていつまでも水が枯渇したときは、故郷が蘇ると捉えたほうがロマンがあって良いですよね。
◯(道人)写真とは真逆の発想かいい。空梅雨で底が見えるダム湖にかつての実家の面影があったのだろう。
○(卯平)ダム底を詠んだ句は珍しくない。ただそこに実家の跡を確認するとなるとそれなりの心情が伺える。但し「空梅雨」では空梅雨でダムの底が見えた、そこに実家が見えたと言う理が先行しているのでは。他の季語の斡旋が検討されれば一行詩として成立するだろう。
○(宙虫)ダム湖に向かう道があったりする。元々生活道路だったのだろうと思う。
逝く夏や友の返信待ちわびて 卯平
◯(ルカ)共感します。
○(ちせい)待望と言う言葉を思います。夏の終わりは抒情を奏でるのかもしれません。
深緑や岩に心眼さとられて ちせい
〇(まきえっと)岩にさとられるとは。
○(敏)「岩に心眼さとられて」とはいったいどういうことでしょう。このわからなさが言うに言われぬ魅力と言ったら良いのでしょうか。
○(仙翁)岩に悟られてもいいではないですか。
ふるさとに赤字の鉄路山滴る 餡子
○(泉)国鉄民営化。ほとんどが赤字路線。難しいですね。
〇(楊子)赤さびの浮いた鉄路と山滴るの対比がいいです。
○(アネモネ)どこもそう。
○(アダー女)廃線にならないで欲しいですね。最近、赤字路線のニュースよく聞きます。
旧道の岩肌脆し虫しぐれ あき子
〇(めたもん)中七の「脆し」と「虫しぐれ」がさりげなく響き合っていて上手い。
何ごともなかったように出水村 道人
○(泉)災害は一瞬ですが、復興は大変です。
〇(楊子)自然は正直でまた薄情でもあります。
○(幹夫)「台風一過」災害とは斯くの如し。
○(敏)出水ごときに何ほどかでも変えられてしまうようなやわな村ではありませんよ、というこころかもしれません。
○(餡子)今年も早くも川が決壊した大変な様子が映され、気持が萎えていらっしゃるだろうなと胸が痛みました。何事も無いときは、海も川も山も生活に欠かせない有り難い「神」。複雑な思いでしょう。
○(ちせい)解釈に迷う句なのですが、村の川が氾濫したのかもしれません。
連山は産土の神稲の花 珠子
○(あちゃこ)山間に育ち、折りある毎に祈ったであろう山々。中七で言い切った強さに作者のリアルが見えます。特選にしようか最後まで迷った一句。
〇(めたもん)生まれ故郷の山々への畏敬の念。季語「稲の花」がぴったり合っています。
◎(道人)稲の花と山の神に惹かれた。
○(卯平)連山からどうしても飯田の句が先行する。しかしこの連山は飯田の連山と異なるようだ。中七からすれば詠み手がたつきを営む地域に密着しているようだ。その景が伝わってくる。と同時に詠み手の郷土への思いが読み取れる。稲の花が落ち着きのある景を伝える。特選を考慮した。
夏雲や河童住む里濁り川 アダー女
○(仙翁)河童も大雨に参っているかの知れませんね。
夏の河いつもフエンスの向かふ側 ルカ
○(餡子)フエンスというのは、もどかしい。いつも隔てられて思うように出来ない。全てがそうだ。隔靴掻痒の感じがよくわかる。
○(宙虫)隔てられた向こうの世界への想い。フェンスを乗り越えることはしないが・・・
一村に棚田百枚雲の峰 楊子
○(泉)雄大な風景だと思います。
◎(ルカ)リズム、景、全てが鮮やかな句。
◎(アネモネ)構図のいいくだと思いました、
○(幹夫)写真の景が存分に詠まれています。
〇(藤三彩)高齢化が進むなかで棚田を守る方々のことを思う
〇(珠子)いにしえの人々が黙々と積み上げた土と石。人力しかなかった時代の汗の重み。
〇(あき子)百枚並ぶ棚田は壮観。音調が歯切れよくて心地よい。
〇(めたもん)「一村」「百枚」の数詞を使った詠みが上手く、日本の棚田の景が浮かび上がります。
金網の邪魔する景色雲の峰 まきえっと
○(餡子)金網の何と邪魔なこと!
つづく
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