第2節 東アジア各国の戦力 中国 1990年代 1
中国の軍事力は、人民解放軍、人民武装警察、民兵からなり、人民解放軍は中国共産党が指導する軍隊となっている。
人民武装警察は人民解放軍陸軍の効率化によって生じた余剰人員を平時には治安維持任務にあたらせるというもので、実質的には陸軍の歩兵部隊であり、装備もアサルト・ライフル、機関銃、重機関銃など歩兵装備と同様である。
人民武装警察は66万人ほどいる。
民兵は輸送部隊、工兵部隊、兵站部隊、後方支援部隊の色彩が濃く、有事の際には人民解放軍の補佐にあたることになる。
中国の陸上戦力は
総兵力160万人、主として旧ソ連軍の装備をコピーしたものが配備されている。
7個軍区、28個省軍区、21集団軍(軍団)、59個師団、35個旅団、10個ヘリコプター連隊からなり、戦車7000両、歩兵戦闘車5500両、野砲/多連装ロケット発射システム15000門、ヘリコプター300機以上を有する。
また、緊急展開部隊が創設され、機動力を高めるため中国国内で生産された民間用航空機なども軍事転用しているようである。陸軍の各種特殊部隊や空軍第15空挺軍と呼ばれる特殊部隊も創設され、総数は2万人以上に登るとている。
渡洋能力は本格的大型揚陸艦、輸送艦が少ないことから限られたものになっている。しかし、1996年の台湾総選挙の際の威嚇的軍事演習においては民間船舶に多連装ロケット発射システムを搭載し実弾演習をしている映像があることから、有事の際は中国に存在する民間用船舶、民間航空機を総動員することが予想される。特殊部隊によるゲリラ・コマンド作戦とともに、その能力は侮ることは出来ないといえるだろう。
人民解放軍海軍は北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊からなり、兵力26万人、水上戦闘艦670隻、潜水艦70隻を有する。
ロシアから輸入した
ソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦は
1996年9月に購入、
1999年12月に1番艦「杭州 HANGZHOU」、
2001年1月に2番艦「福州 FUZHOU」が引き渡された。
さらにその後1隻が配備された。
ソブレメンヌイ級艦隊防空ミサイル駆逐艦は
満載排水量7940トン、
蒸気タービン推進、
兵装は
130mm連装砲2基、
SS-N-22艦対艦ミサイル8発、
SA-N-7艦隊防空用艦対空ミサイル発射機2基、
RBU-1000 6連装対潜ロケット発射機2基、
533mm連装魚雷発射管、
30mm近接防御武器システム4基
である。
搭載航空機は
カモフKa-28哨戒ヘリコプターを2機である。
SS-N-22艦対艦ミサイル(NATOコード:サンバーン)はマッハ2の速度で超低空をS字状に飛来するミサイルで、発見、迎撃することが非常に困難である。
また、SA-N-7艦対空ミサイルによって本格的艦隊防空能力を保持するにいたった。
しかし、基本設計が1970年代後半であり、情報処理能力、防空能力、電子戦能力、ステルス性、各種センサーは西側陣営の最新鋭艦に比べ劣っているようである。
ルーフ- LUHU級駆逐艦は
天安門事件前に計画された艦で、
西側陣営が中国に幻影を見ていた時期であるため多くの西側陣営の技術が導入されている。
ガス・タービンはアメリカのゼネラル・エレクトリックのベスト・セラー商品であるLM2500で、
短距離艦対空ミサイルHQ-7はフランスのクロタル・ミサイルをライセンス生産したものである。
1994年就役、
満載排水量4600トン、
ディーゼル・ガスタービン推進、
HQ-7艦対空ミサイル8発、
3連装魚雷発射管2基、
搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター2機である。
ルーター LUDA級駆逐艦は
中国初の国産駆逐艦で、
人民解放軍海軍の主力で16隻が就役している。
1971年から1991年までの長きにわたって建造され続け、そのためバリエーションが多くある。
満載排水量3670トン、
蒸気タービン推進、
兵装は130mm連装砲2基、
57mm連装砲2基、
25mm連装機銃4基、
HY-2艦対艦ミサイル6発、
HQ-7短距離艦対空ミサイル8発で、
搭載航空機はハルビンZ-9Aヘリコプター2機である。
排水量に対して兵装が多く、バランスが悪いと思われる。