9月17日、ミンスク市内で行われた女性フォーラムの余興コンサートで、ベラルーシ人ファンから非難されつつロシアの有名歌手バスコフが出演しましたが、翌日、バスコフのほか、ロシアの人気歌手フィリップ・キルコロフ(「百万本の赤いばら」で有名なアーラ・プガチョワの元夫)やアニータ・ツォイや、ベラルーシの歌手20人が参加して、新曲「愛する(国を)渡さない」のミュージック・クリップを発表しました。
バスコフは「出演しないで!」というベラルーシ人ファンの声に対して、
「ファンのみなさん、批判をするのはもうやめましょうよ。ベラルーシ大統領選は公正に行われたのです。」
とコメントしました。
ベラルーシ人ファンの多くをなくすより、ギャラのほうが大切なのでしょう。そのギャラももともとベラルーシがロシアに借りた借金の一部なのですが。
ロシアからお金を借りて、そこからロシア人歌手のギャラが払われ、そして借金を返すためにベラルーシ国民が税金を納めないといけないのですが、若い世代(労働可能年齢)の多くは国を出ることを検討しています。
そうすると借金など返せないでしょう。こんなに借金を返さなさそうな国に、ロシアはどうしてお金を貸したのでしょう? ハイリスクすぎます。そのリスクを背負ってでも何かロシアが得することがあるんでしょうね。
下手するとベラルーシはデフォルト、つまり国そのものが倒産する可能性があるのに・・・。
ロシアがベラルーシに貸したお金はもともとロシア人が払った税金ですよ。ロシアの納税者は人はそれでいいと思っているのでしょうか。
またベラルーシに住んでいないベラルーシ人の中ではロシアに住んでいて働いているベラルーシ人が最も多いのですが、この人たちは短期の出稼ぎ労働者でない限り、ロシアに税金を納めています。
新曲「愛する(国を)渡さない」はベラルーシ大統領が国会での演説で発言したフレーズです。
愛する祖国ベラルーシを、ポーランドや西側諸国に渡さない、ベラルーシの独立を守る、反政府派に渡さない、そのほうがベラルーシ人にとっていいのだから・・・というベラルーシ愛、祖国防衛精神に満ちたフレーズです。
それをベラルーシ人が歌うのは分かるのですが、どうしてロシア人が歌うのでしょう?
また、バスコフのような有名歌手がもらうギャラがどれぐらいなのか知りませんが、もらった高額ギャラのうち何%かは所得税としてロシアに納められます。
全体から見ればわずかかもしれませんが、ロシア政府が得ることになるのです。
つまり、ロシア政府がロシア人から集めた税金から、ベラルーシに借金として貸す。お金の流れはロシアからベラルーシへ。その中からロシア人歌手のギャラが支払われ、ロシアにお金は戻っていく。そしてギャラのなかから所得税がロシア政府に戻って行く。このような流れになります。
そしてベラルーシ政府は借金を満額返さないといけない。そのためにベラルーシ国民から税金が取り立てられる。コロナウイルスで閉店? 都市封鎖? とんでもない。ストライキなどもってのほか。しっかり開店、営業して、売り上げを伸ばし、じゃんじゃん税金を納めなさい、ということになります。
コロナウイルス第二波が来ても、通常営業、いやさらなる売り上げアップを目指せとハッパをかけられるでしょう。
そしてロシア人にとってベラルーシは祖国ではないですよ。
それともベラルーシはもうロシアの一部だとこのロシア人歌手たちは勘違いしているのでしょうか?
だとしたら、「愛するベラルーシの独立を守り、外国には渡しませんよ。」という歌のテーマに反しています。
ロシアはベラルーシから見たら外国なんですから。
現在、バスコフのインスタは元ベラルーシ人ファンの書き込みで大炎上しています。
このミュージック・クリップに出演するのを断ったベラルーシ人歌手もいます。
今「嫌がらせを受けている」そうです。芸能界から干されつつあるということでしょうか。
ちなみにベラルーシでは芸能人は国が管理するたった一つの芸能事務所に所属しなくてはなりません。日本のように多くの民間経営の芸能事務所がしのぎを削る、というシステムではないのです。
つまりベラルーシの芸能人は国家公務員扱いなのです。(政府お抱え芸能人)このような公務員歌手が、「愛する国を渡さない」といった歌を歌ったり、大統領が聞きに来るコンサートに出演したり、国家予算から給料(ギャラ)をもらっています。
一方でわざと国営芸能事務所に所属しない歌手も少数派ですがいます。個人で芸能活動をしないといけないので大変です。そういった歌手が、今、反政府派デモ集会で歌っています。
今日はそんな歌手の一人、リャヴォンが自分の新曲「人民の敵」を発表しました。