丼季報亭「8万時間の休息」

旅の記録や季節の便りそれに日々の思いを軽いトーンで綴ってみました。

57. 「香典返し」に床屋さん?

2008-05-11 21:02:34 | 閑話


        57. 「香典返し」に床屋さん?

 年明け早々 ご祝儀やら不祝儀が続いている。 時節柄 友人や親戚の親の代が80-90歳代を迎えているためか不祝儀が多い気もする。「香典返し」もギフト会社の「商品選択可能なギフト券」がいつのまにか主流となった。

 商品券や金券と ギフトカタログの合体で「お好きなものを選んでください」のビジネスモデルはいつしか社会に定着している。

 最近ではお好きなものを と言われても それほど欲しいものとて見あたらない。 腕時計やら目覚まし時計、リュックサックや雑貨の類を取り寄せたが、これもそうそう必要になるわけも無い。

 選択可能なメニューの中に今回は珍しく購入したい物が見つかった。家庭での理髪用のはさみである。すきバサミとの2点セットで注文した。重宝しそうである。

                


 若い頃 通った近所の理髪店へも 最近はまるっきり行かなくなった。主要駅にあるクイックバーバー「QBハウス」で軽くカットしてもらえれば充分である。 それすらも2-3ヶ月に一度でよい。ほとんどは家庭で妻が軽くカットして済ませるようになっている。

 20年ほど前の話になるが 仲の良い近所の理髪店のマスターに「アメリカのように カット・洗髪・髭剃りを 選択メニューにし 料金も分割にしてはどうか?」と訊ねたことがある。

 ちょうどバブルのピーク時で、私の提案は笑って切り捨てられた。彼は男性用にパーマの最新設備を導入し助手を数人増やし投資を続けることで店の規模拡大を図っていた。

 当時私は多忙を極め 床屋で一時間を消費する時間的余裕が無かった。いつもヘアカットだけで フルコースの料金を支払い疑問に思っていた。

 他の理髪店も探して見たが、分割メニューのサービスはどこにも無かった。クイックバーバー「QBハウス」登場の10年前の話である。

                

 1997年5月29日付けの日経流通新聞が「低価格理容店をチェーン化」のタイトルでニュービジネスのスタートを報じている。その後の「QBハウス」の急展開ぶりは 都心へ通われている人はよくご存知のとおりである。 千円札一枚で 10分間のヘアカット、刈上げて下に落ちた頭髪はバキュームで吸い取る。理容師は 1時間当たり5人の客を着実にこなしていく。

 
 ヘアカット専門店のフランチャイズ事業および店舗経営を事業内容とする「キュービーネット株式会社」は平成8年11月1日創業した。 2008年5月現在  資本金2億3560万円 従業員数  53名 で 急速にフランチャイジーを増やし続けている。


 仲の良い近所の理髪店は カット・洗髪・髭剃りそれに肩をもみ顧客一人にゆっくり1時間をかける。それはそれで付加価値はあるので バブルが弾けた後も しばし常連も減少しなかった。

 しかしリストラやホームレス増加の報道が当たり前になっていた頃、私も含み客足は遠のいていった。

 最寄り駅の駅ビルに「QBハウス」が登場するや1時間4千円也の理容標準メニューを選択する人はみるみる減少していったのである。特に父親に連れられてきていた少年のヘアカットは一気に低価格の理髪店へ流れていった。



                

 惜しむらくは あの時ビジネスモデルをもっと煮詰めてみるべきであった。 男性理容の分割メニューからヘアカット専門店へと発想を転換すべきであった。 それが自分で事業化することが出来なかった最大の理由であろう。

 昔からヘアカット専門店は新橋駅構内に存在していた。 珍しくないとの既成概念が 思考のひとひねりできなかった理由である。

 後年新規事業の開発に専念した自分の脳裏に一抹の悔しさが帰趨する。柔軟性を欠いた頭脳の回転の その硬さは致命的ですらあったと。


              


 さて その後 妻の理容技術は 日を追って向上している。 今では 前述の新しいはさみと5枚刃剃刀を駆使し およそ10分で家庭内理容は完了する。 これからの自分には 普段はこれで充分であるが 妻が頭髪をカットするたびに 脳裏にほろ苦い思いが横切っていく。


                

それでも 人生今日が初日 燃え尽きる千秋楽目指してこれからこれから。

ほかにもブログを公開しています。
◆「丼季報亭の四方山話」(2002年9月投稿開始)は 
URL:http://kj2k3.at.webry.info/
◆4Travel.「Donkyさんの旅のブログ」」(2013年6月投稿開始)は 
URL:http://4travel.jp/traveler/donky2013/                                                                


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2 コメント

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もっいないお話 (あこ)
2008-05-11 09:54:15
そうだんですか~
昔からカットだけで、満額支払いをされていたのですね~
たしかに、フルコースは時間がかかりますね。
多忙な方がたには、時間もお金も、もったいない話です。
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Unknown (かくみ)
2008-05-12 12:58:19
QBハウスはブルーオーシャンを語る上での代表例としてよく使われますね。ホストコンピュータ全盛の時代に好き好んでクラサバへ移行しないように、なかなか10分1000円という発想は実現しにくいものですね。

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