43. 塩爺のことばに
科学技術の進歩が生活のスピードを大きく変えた。のんびりと生きてきた大人たちの世界を凄まじい速度で変えていった。経験だけが財産ではない世の中になり、I/Tバブルで若くして巨万の富を手にした技術者が世にはびこる。ファミコンのソフトなどで一夜にして法外な富を得た人物たちが英雄視されていく。
塩川正十郎氏の言葉
「戦後、無規律な解放の下、自由放漫を謳歌し、個性尊重の美名に隠され、したい放題の無責任な世俗を作ってきた「大人」の責任が問われている。」小泉政権時代に、重用され一躍愛される日本のお爺ちゃんになったあの塩川正十郎氏の言葉である。戦後、日本人の心の変化に関する問題点を実に的確に述べていると思う。
善悪の判断と思いやり
多くの日本人が 宗教教育が無くとも共通の善悪の判断を持っていた。 神戸の震災時に見られたように 全国から駆けつけたボランティアの被災者への思いやり。人を少しでも救う気高い心を日本人ならみな知っていたはずであった。”善と悪の判断””いたわりの心”少なくとも精神世界ではこれらを存在し続けていたはずであった。
わが子にだけは伝わるものが
自由放漫を謳歌する世の中にあっても、子供たちはいつも人を愛せるものと錯覚していた。とりわけ弱いものに対する思いやる心・勇気とはやさしさであることを 黙っていても伝わるものと思っていた。 人をいたわる心も親たちは暗黙のうちにわが子に伝わるものと思っていた。
しかし結果は違っていた。なぜか弱いものを愛せない。他人に対して理想が高く足りないところを指摘する知恵にたけ、自らの未熟さに対し不平と言い訳が多い。何かいやなことがあるとすぐに投げ出し、個人の権利だけを主張する。そんな子供が増えていった。いつしか学校が荒廃している報道も珍しくもなんともないものになっていた。
中学の校長との会話
10年前に娘の通っていた中学の校長が我が家を訪れたとき、
「精神的にあまりに幼い、理解に苦しむ父兄が増えているような気がしてならない。」と言われ「自由を履き違え、日本人本来の良さが消えているのですから教育現場も容易ではないでしょうね。」と応えたところ「お父さん、学校はいったいどうすればよいのかね?」
専門家に聞かれてもと思ったが、「この際、親にもその点を教えなきゃだめですよね。個性尊重・自由の代償は大きいことを校長先生は親にも再教育していけば良い。」とっさに私見を返してしまった。
「お父さんは PTAの集まりのときに親も学校が教育し直せと言うのですか?」「少なくとも長幼の序といたわりの心の大切さを思い出させないことにはね。 大変だけれど 親にも気づかせなきゃ学校も家庭も変わらないと思いますよ。」「しかしそれは…」校長は唸り黙ってしまった。
老舗の本屋さんの消失
この話は結論などすぐに出るものではない。
老舗の本屋さんである「芳林堂」や「旭屋書店」までが閉店してしまう世の中である。少子化とファミコンが 子供たちに一人遊びの特権と刹那的で快楽志向の「ゲーム脳」を与え続けている。
功罪はわかっていても誰も「セガ」や「任天堂」を訴えようとはしない。論理的思考や倫理観などどこかへ飛んで消えうせている今の社会では 抗生物質のような即効薬など存在するとも思えない。
「ドン・キホーテ」と言われても
それでも みんな心の奥底には 共通の価値観を持っている。善悪の判断だけは共通で 嘘や逃げの言葉を卑怯と思っている。弱いものをいたわり憐れみの心を持ち続けることができると。
時代錯誤の「ドン・キホーテ」と言われても それが 日本人本来の民族性であり 良さであると信じ続けていたいものである。
今日もお立ち寄りいただき有難うございました。
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◆ブログ「丼季報亭の四方山話」(2002年9月投稿開始)は こちら
◆4Travel「Donkyさんの旅のブログ」(2013年6月投稿開始)は こちら
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