新潟久紀ブログ版retrospective

新潟暮らし推進課11「新潟大学生との意見交換会(その2)」編

●新潟大学生との意見交換会(その2)

 新潟大学3年生との"座談会"は12月の下旬で、新潟の沿岸部らしい冷たい雨風の日であった。新潟大学キャンパスのほぼ中心に位置する「総合教育研究等」の教室の一つをお借りして、課の担当職員と二人で昼前から会場準備を行った。私が在籍していた頃は「教養棟」と称していたその建物に実に33年ぶりに足を踏み入れた。耐震化のためのブレスが窓枠に斜めに配され、各教室のドアが引き戸方式にバリアフリー化しているなど内装もリニューアルされていたが、その構造や雰囲気は当時を思い起こさせ、一気に懐かしい思い出の幾つかを脳裏に思い出させる。歳を重ねると、普段は全く思い出しもしないのに"その場"が呼び覚まさせる記憶というものが増えたようだ。
 正に自身の大学生時代を思い出しながらであったので、開催時間を前に集まり始めた学生さん達に順次声掛けするのも何となく楽しかったし、昔話が切り口になって、人口減少問題などという固いテーマで意見交換を始めるにあたりリラックスしてもらうための雑談ができた。
 そんなアイスブレーキングが奏功したのか、ロの字型の配席で向き合う大学生達は県庁職員である我々を前に臆することなく中々手厳しい。特に他県から新潟大学に進学してきた女子学生達は「新潟の残念」を次々と繰り出してきた。
 中心市街地から遠くバスや鉄道も本数が少なく不便。特に天気が悪い日には手掛ける気になれない。新潟市は沿岸部なので雨風が横に吹き付けてくる。山が無く海に高い割に大雪になることも多い…。先ず彼女たちの口をついて出たのが新潟の特に秋冬の天候の問題だ。こればかりは自然環境であり人為的になんともしがたいもので応答に苦慮する。私の大学生時代を思い出せば、そんな厳しい天候に左右されずに活動できるように自動車を保有する者が多かったのだが…。それを話すと、男子学生も含めて、今時の新潟大学生はあまり車を所有しないのだという。経済性などを考えたしっかり者が増えているのかもしれないが、一方で、意見交換していると自由自在にどこにでも行ってみたいという若者の衝動のようなものが少なくなっているようにも思える。良くも悪くも全体的にお行儀の良さを感じるのだ。
 なんとも致し方の無い天候の苦言につづいて出たのは、車を所有しないこともあり、市街地から離れたキャンパス近くのアパートに済むことにした新入生達を「放って置きすぎ」だという指摘だった。特に県外から初めて新潟で暮らす学生にとって、地元に友人もおらず、新潟市内はもとより新潟県内において、どの場所にどんなものがあるか、どう楽しんだり過ごしたりできるかの情報が全く無く、ネットで調べて頻出頻度の高さに期待して出かけてもがっかりという経験が多かったという。「古町」はその最たるものだとも。来県して暮らし始めの頃の出来事による印象というのは根強く残るもので、他県から来た新入生と話をすると「新潟の残念な場所」の話題が少なくないという。
 この指摘には対応策がありそうだ。例えば、季節ごとに新入生を募って、一日かけて県内各地の面白さ楽しさをワゴン車などで回るツアーを企画するなど。自治体の地域振興関係の財源やスタッフなどを活用したり、訪問地を数珠つなぎにしたりれば、結構な需要があるのではないかと思った。広い県内なので移動の車中の時間も活用していろいろな意見交換や商機にもつながる若者の需要も見いだせるかもしれない。生の声を聞くとアイデアは広まるばかりだ。
 全ての意見ややり取りをここに記すことはできないのであるが、無償で参集してくれた学生さん達は予定の時間を超過してまでも、新潟暮らしへの辛口から褒め言葉まで実に様々で多くの話をしてくれた。少人数ではあったが、それ故に、遠慮の無い意見や指摘をもらいやすいだろうと考えた設営の意図は当たったと思う。都内在住の若者達からも、アンケートなど調査母数の多さで全体の傾向を捉えるのは、一人ひとりの実在としてのリアリティから離れていくリスクがあるので、そればかりではなく、こうした少人数の座談会的な取組が施策に有意なヒントを与えてくれるのではないか。意見交換会の終わりに解散する学生さん達一人ひとりに謝意を述べ頭を下げながら私はそんなことを考えていた。

(「新潟暮らし推進課11「新潟大学生との意見交換会(その2)」編」終わり。県職員として11箇所目の職場となる新潟暮らし推進課の回顧録「新潟暮らし推進課12「にいがた若者座談会(その1)」編」に続きます。)
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