●建設業の新分野への進出の優良事例表彰
新潟県において建設産業は、地域の経済・雇用を支え、県民の安全・安心の確保を担う本県の基幹産業となっている。土木行政を進めるにあたり、公共工事の入札制度の管理運用により競争原理を通じて公共投資の適正執行を監督することが重要であるのだが、同時に、経済や郷土保全の担い手たる建設業者が健全に経営され続けるようにもしていかなくてはならない。
かつては、入札制度により価格競争を強化していかに事業費を抑制するかという考え方が強かったのだが、私が土木部に初めて赴任したこの頃には、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が改正され、施工品質の確保のためにも請負業者の適正な利益を確保する必要性が重要視され始めていた。安く買いたたけば手抜き工事のリスクや、下請け孫請け構造の中で労働条件の悪化など結局は弱者へのしわ寄せにつながってしまう。「適正に儲けていただけるようにしなくてはならない」というパラダイムシフトの波が押し寄せていたのだ。
しかしながら、近年の建設投資の減少や景気の低迷などにより建設業の経営環境は極めて厳しい状況。そこで、新潟県では建設企業が経営を維持していくために新分野や新市場に進出し、企業の成長・拡大を図ることを有効な選択肢の一つと考え、経営の多角化に積極的に取り組む企業の支援を始めていた。
公共投資の全体としての縮小により、しっかりと儲けを確保できるほどの仕事が確保できなくなっていき、建設業者の経営に厳しさが増していく中で、体力のあるうちに別の収益源を確保するように行政も後押ししようという政策だ。
新事業展開や異業種参入のための設備投資などハードを直接補助するような費用対効果の担保の取れない支援はできないのであるが、調査や情報収集、商品開発研究等に係るソフトの補助などを"小ぶり"であるが予算措置し、それを誘因に建設業界に収益構造の転換につながる取り組みを促した。
私が着任する以前の平成24年には、県内の建設企業により新分野へ進出した38の事例をまとめて冊子として公表しており、それ以降、毎年継続的に事例を調査して優良なものを表彰するという活動を継続していた。
私が関わった平成26年度においては、新発田市での創業で、公共事業のほか圃場整備や道路維持管理など地域に密着した業務を行う馬場工務店という建設企業の取組が選出された。進出した新分野がカステラなど菓子の製造販売というので驚いた。
何か門外漢が流行りの売れ筋にやみくもにのっかったのではと勝手に疑ったが、話を聞くと、親族で菓子製造に心得のあるものをしっかりと責任者として据えるとともに、"地元新発田の美味いもの"を作って発信していきたいというしっかりした理念の下で、地元の食材を生かして他のまねではない新発田ならではの製品づくりをしていることがわかり、直ぐに本気で収益の柱の一つにしようとする"本物の取り組み"であることが理解できた。
ホームページにおいて所定の枠組みで掲載すると、通り一遍の事例のようにしか見えず、行政として一企業の宣伝につながるような肩入れもできないので、この取り組みの真の面白味が伝えきれずに歯がゆかったものだ。やはり、こうした取り組みは民間のメディアで取り上げられれるように仕組まないと、とも思ったものだ。
ところが、令和3年の最近になって、地元紙の特集で取り上げられたのを読んで、くだんの馬場工務店が異業種参入したカステラ等の製造販売が引き続き好調らしいことを知り非常に嬉しくなった。行政が民間事業を表彰するのは政策効果というより一時的な寵児に便乗するかのようなケースが散見されるのだが、この「しばうま本舗」のたゆみない取組は顕彰を続けたいものだ。
かつては、入札制度により価格競争を強化していかに事業費を抑制するかという考え方が強かったのだが、私が土木部に初めて赴任したこの頃には、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が改正され、施工品質の確保のためにも請負業者の適正な利益を確保する必要性が重要視され始めていた。安く買いたたけば手抜き工事のリスクや、下請け孫請け構造の中で労働条件の悪化など結局は弱者へのしわ寄せにつながってしまう。「適正に儲けていただけるようにしなくてはならない」というパラダイムシフトの波が押し寄せていたのだ。
しかしながら、近年の建設投資の減少や景気の低迷などにより建設業の経営環境は極めて厳しい状況。そこで、新潟県では建設企業が経営を維持していくために新分野や新市場に進出し、企業の成長・拡大を図ることを有効な選択肢の一つと考え、経営の多角化に積極的に取り組む企業の支援を始めていた。
公共投資の全体としての縮小により、しっかりと儲けを確保できるほどの仕事が確保できなくなっていき、建設業者の経営に厳しさが増していく中で、体力のあるうちに別の収益源を確保するように行政も後押ししようという政策だ。
新事業展開や異業種参入のための設備投資などハードを直接補助するような費用対効果の担保の取れない支援はできないのであるが、調査や情報収集、商品開発研究等に係るソフトの補助などを"小ぶり"であるが予算措置し、それを誘因に建設業界に収益構造の転換につながる取り組みを促した。
私が着任する以前の平成24年には、県内の建設企業により新分野へ進出した38の事例をまとめて冊子として公表しており、それ以降、毎年継続的に事例を調査して優良なものを表彰するという活動を継続していた。
私が関わった平成26年度においては、新発田市での創業で、公共事業のほか圃場整備や道路維持管理など地域に密着した業務を行う馬場工務店という建設企業の取組が選出された。進出した新分野がカステラなど菓子の製造販売というので驚いた。
何か門外漢が流行りの売れ筋にやみくもにのっかったのではと勝手に疑ったが、話を聞くと、親族で菓子製造に心得のあるものをしっかりと責任者として据えるとともに、"地元新発田の美味いもの"を作って発信していきたいというしっかりした理念の下で、地元の食材を生かして他のまねではない新発田ならではの製品づくりをしていることがわかり、直ぐに本気で収益の柱の一つにしようとする"本物の取り組み"であることが理解できた。
ホームページにおいて所定の枠組みで掲載すると、通り一遍の事例のようにしか見えず、行政として一企業の宣伝につながるような肩入れもできないので、この取り組みの真の面白味が伝えきれずに歯がゆかったものだ。やはり、こうした取り組みは民間のメディアで取り上げられれるように仕組まないと、とも思ったものだ。
ところが、令和3年の最近になって、地元紙の特集で取り上げられたのを読んで、くだんの馬場工務店が異業種参入したカステラ等の製造販売が引き続き好調らしいことを知り非常に嬉しくなった。行政が民間事業を表彰するのは政策効果というより一時的な寵児に便乗するかのようなケースが散見されるのだが、この「しばうま本舗」のたゆみない取組は顕彰を続けたいものだ。
(「土木部監理課12「建設業の新分野への進出の優良事例表彰」編」終わり。「土木部監理課13「現職での死去が相次ぐ(その1)」編」に続きます。)
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