■JR羽越本線100年を機に新発田地域の振興を考えます。
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◆新発田駅以北・私の提案(その3)
世界で次々起こる戦争や紛争、感染症パンデミック、そして地震といった自然災害などにより、明日をも知れぬ先行きに誰しもが多かれ少なかれ不安を抱いている時代だと思う。そんな中で、自分が今を生きている証を残すことや、自分が運よく健やかに暮らし続けられるような細やかな”張り合い”として、将来の自分に向けた"願掛け"というか楽しみを残すことが、訴求力になるのではないかと感じているところ。
デジタルの時代であり、手元のスマホに記録したり、SNSなどを通じてクラウドに記録していくというのも簡単であるが、電源の途断や機器の故障により読み取ることができなくなるデジタル機器の危うさ、そして、ネットやクラウドを介するリスクなどが懸念される。
また、デジタル技術の益々の先鋭化が、アナログへの回帰や見直しを引き起こしているような雰囲気を今の世の中に感じとれることもある。
「タイムカプセル」はそのレトロな響きとともに、幼い頃に一度くらいは同じ趣旨で地中に何か埋めたことがあるなあという郷愁を呼び起こす。情勢変化の目まぐるしさからドッグイヤーの時代と言われたのも随分以前の話であり、タイムカプセルを開く時期はそう遠くない10年後前後くらいに設定し、掘り返す都度、その時の自分の思いも新たに次の10年後の自分に向けて埋めることを繰り返すくらいが丁度良いかもしれない。
このイベントを誘因のひとつとして、都会人の一群を新発田地域の里山の植樹に呼び込み、それが毎年催せれば、10年後以降は毎年、自分のタイムカプセルの掘り起こしを目当てにリピーター達がやってくる。変わらぬカプセルからの語り掛けと今の自分との乖離を感じ、そして10年前との緑の木々の違いからも感慨深いものが得られるに違いない。自分も関わった植樹の連鎖が緑を豊かに保ち、美しい里山空間を守っているのだと、良い環境づくりへ自身の貢献が効いていることを感じ取れるのは、達成感のような、生きている実感のようなものをもたらすかもしれない。
脱炭素、SDGsという企画に関わろうという人々はそもそも意識が高いのだから、現地への参集も、その日くらいはできるだけ環境負荷のない方法でということになる。
「櫛形山脈」は、山脈と呼ばれるくらいあって、一つの高みしかない円錐のようなものではなく、100m強から600m弱の高みを稜線でつないで8kmほどに連なるありそうでなかなかない珍しい形状だ。
令和5年に新発田地域振興局へ着任早々の私は、春ということもあって山脈の中ほどに位置する大峰山の麓近くの公園において見事だと聞いた桜の状況を視察に行ったのだが、桜が整然と植樹された簡単な広場というものでは無くて、山の高低や形状を上手に利用しつつ、一部はヒトの手を加えて整地しながら、桜の樹々がしかも箇所ごとに異なる種類が植栽されている「桜の博物館」のようなものであったことに驚いた。
また、秋には、櫛形山脈の南端近くを国道7号付近から入り山越えして裏側にある名刹の「菅谷不動尊」に到達して国道290号へと抜ける「箱岩峠」を視察し、その高みから近くに見える山形県との県境の飯豊連峰や、反対側には遠く佐渡も望める日本海の広がりを眺めて、この素晴らしい景色が、最寄の鉄道駅やアクセス便利な国道から、場合によっては徒歩でのそれほど無理のない登山により得られると体感した時には、これはこの地ならではの貴重な誘客資源だなと思ったものだ。
ことほど左様に、櫛形山脈は、アプローチの仕方により、季節により、数えきれないくらいのバリエーションをもたらしてくれそうなフィールドであると直感する。「くれそうな」というのは私自身が未開拓であり雄弁に語れる体験を持ち得ていないからだ。気候がよくなったら色々なアプローチを試してみたいと改めて思う。
「櫛形山脈」は現状で緑濃い森林なので、「植樹しないと危ない」などと悲壮感を押し出して人心を絆して誘い込みをかける訳にはいくまい。広くて労力を要する桜公園の整備に一肌脱いでくれませんかといって、桜の時期に「たまには行ったことの無い地方での花見でも楽しんでみるか」などとコロナ禍明けで久々に珍しい土地に出掛けたいという人心をくすぐるというのは手かも知れない。花見となればどうせなら美味いと評判の新潟の地酒を楽しみたいということに繋がるので、JR羽越本線の活用にもつながろう。だが、「桜」で推せるのは限られた時期でしかない。
もう一つの切り口で思いつくのは、山脈形状ゆえに、しかも低山なので、色々な登り口から入ってハイキング気分から少し本格までの多様なアプローチや過ごし方が楽しめるということで、コース紹介をして、数か月や数年かけて「全制覇」をしてみませんかというものだ。
これであれば、気候の穏やかな時季のみならずある程度の積雪時の来訪も促せる。こうした櫛形山脈への誘客のアイデアは既に有って私が知らないだけかも知れないので調べてみて、先々の仕掛けづくりも念頭にその前ぶりとして必要を感じれば、県の地域機関として新発田地域振興局でも情報発信を強化したいと思う。
それにしても、桜と低山の魅力ということだけでは、「日本一低い山脈」という希少性からの誘客は容易に多くは望めないだろう。
やはり、「この土地ならでは」の、「ここに来ずしては体験できない何か」で、しかも「できれば羽越本線を使って」ということでなくてはならない。
「歴史の京都」や「最新の東京」のような圧倒的な誘客力にも少しは抗えるような資源が地域の歴史や伝統、今日のありのままの姿の中に見出せないのなら、新たに創造して付加する必要があるのであろう。
私のようにカネもマンパワーも余力のない新発田地域振興局という県の出先機関を預かる立場で、何が出来るのか。昭和と平成のマインドどっぷりで育ち、非力で虚弱な文化系の私が思いつくのは、やはり「タイムカプセル」というレトロ感覚での知恵と、加えてはデジタル技術の活用ということになりそうだ。
(「活かすぜ羽越本線100年18「新発田駅以北・私の提案(その3)」」終わります。「活かすぜ羽越本線100年19「新発田駅以北・私の提案(その4)」」に続きます。)
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