新潟久紀ブログ版retrospective

柏崎中学生時代3「強めのキャラにドギマギ」

●強めのキャラクターにドギマギ

 柏崎市立第二中学校は、入学当初からその校舎のくたびれた感を始めとして、目にするものが小学校時代と比べて粗雑さを呈していた。例えは、給食についても、小学校時代は綺麗な艶消し銀色のアルマイト(?)製の四角いトレイに銀色の食器が用いられたものだったが、中学では、トレイの代わりに使い捨ての緑色の藁半紙のような薄い再生紙を敷くといった具合だった。よく言えば、少し大人に近づいたのだから何事も簡素さに慣れろという教えが伝わるようだった。
 逆に言えば、柏崎市の街中にあった母校の比角小学校は、すこしお澄まししたような校風と、ともすると弱さとも言える様な優し気な子供達が多かったのかもしれない。他の小学校卒業生たちとミックスされてみると、彼らの良い意味で逞しさというかバイタリティで私は日々圧倒されたものだ。
 給食時間になると、班の6人位ごとに机を向き合わせ、顔を見合わせて食べるのであるが、4月早々に、対面となった別小学校出身の女子から「食べる時は口を開けちゃダメよ」とご指摘をくらった。食べ方について注意されるのは中学生にもなって生活の基本ができていないと思い知らされるようで非常に恥ずかしくなったのだが、長い小学校生活の中では気にも留めなかったこと。小学校時代に私の咀嚼ぶりが気になる級友もいただろうにそれを言わないのは気遣いだったのだろうか。目の前の彼女のように遠慮なく言い放ってくれるのは有難いことなのかもしれないと思えた。
 事程左様に、柏崎市の郊外の小学校から合流した子供達というのは、歯に衣着せぬ物言いと、目を見張るような行動力で、とても新鮮な刺激を私に与えてくれた。
 ガタイがデカい上に色黒の強面で、何か気に障ることでもすればすぐに殴られるのではないかと思えたような級友の男子は、理科の実験でカエルの解剖があるとなれば、一人で田んぼから何匹ものガマガエルを調達してきて教材として持ち込むなど、クラスにとって良かれと思う事は抜群の行動力で貢献してくれるので、同じ学年かと思えないほど大人びて感じられて畏敬の念すら抱いたものだ。また、彼は、放課後の部活の最中に私が体調を崩して体育館の隅で独り青ざめていると近寄って心配してくれるなど、見た目によらないというのは大変失礼だが、とにかく気配りの人であった。そんな彼が同じ小学校出身で私の食べ方を注意した例の女子に軽口でいじられていたりするのを見ると微笑ましく、その関係性が羨ましくも感じたものだ。
 むしろ見た目は小柄で人懐こそうで、クラスでおちゃらけたりして、小学校時代にはなかった楽しませ方をしてくれるようなクラスメイトが、別の中学校のツッパリ連中と流血の喧嘩騒ぎを繰り返しているなどと後々聞いたりすると、見かけでは分からない奥の深い連中と一緒になったものだなあと思った。
 異なる小学校ごとの校風というか、その所在する地域の風土が育んだようなキャラクターの違いが一年生の頃は鮮烈で面白かったのだが、月日を重ねるとそうした異なる個性がミックスされて相互に影響しあったことと、自身の内に隠れていた特徴が表に出て際立ってくるというのが、まさに心身の成長と変化の著しい中学生時代なのだと思う。
 人が良くて純朴さがとりえの印象だった同じ小学校卒のスポーツマンのとある男子は、三年生にもなると、髪型に執着してドライヤーを何時間もあてたり炭酸飲料で校則ギリのラインまで髪色を薄めてみたりするようになり、他校の女子との交際も噂に聞いて、大人びていく姿に目を見張った。
 そもそも、一年生の時に見た三年生というは、男女ともにもう出来上がった大人の様な雰囲気で、やることなす事が立派に見えたものだった。
 秋の文化祭か何かで、三年生は体育館のステージ上に数人がフォークギターを抱えて座り、「風」の「22歳の別れ」を弾き語って見せたり、小学校の学芸会的な出し物とは明らかに異なる次元の迫力ある演劇を見せてくれたりと、いちいち度肝を抜かされた。
 そうしたアトラクション以外でも、私の部活の先輩で堅物だった生徒会長が、下級生女子からラブレター(死語?)を送られて「中学生なのに色恋にうつつを抜かしていていいのか」と本気で怒っているという逸話など、”屁理屈こき”というか”語り”がちな人も男女ともに先輩たちには多かった。
 私の兄は5歳も離れていてあまり私をまともに相手することもなく、何事においてもかなり先を行くその後ろ姿を見ては私は何でも知ったような風になっていたのだが、それは仮想ともいえる知見だった。同級生が日々成長して変わっていく姿や、一つ二つ違いの上級生達が何かに本気で挑戦したりあがいたりしている現在進行形の姿は、私に物事への真摯な向き合い方のリアリティを教えてくるようで、柏崎市立第二中学校での日々は曇った薄ガラスが目から剥がれ落ちていくように感じられる日々だった。

(「柏崎中学生時代3「強めのキャラにドギマギ」」終わり。「柏崎中学生時代4「先生、バスケがしたいです(その1)」」続きます。)
小学生時代までの「柏崎こども時代」(全46話)はこちら
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「活かすぜ羽越本線100年」をスピンオフ(?)で連載始めました。

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