嵐ファン・大人のひとりごと

嵐大好き人間の独りごと&嵐の楽曲から妄想したショートストーリー

妄想ドラマ『スパイラル』 (2)

2010年11月04日 | 妄想ドラマ『スパイラル』
紅白の司会、嵐くんたちが嬉しそうで私も嬉しい

台本できっちり固めずにのびのびやらせてほしいなぁ~

生で時間が限られてますから、そうもいかないでしょうけど。



それでは主題歌は『スパイラル』で


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    妄想ドラマ 『スパイラル』 (2)



美菜の言葉に渉は驚いた。

先週のポスター撮りはスムーズにいった。

スタッフのおかげで終始和やかな雰囲気だったけれど、

今度の舞台に前向きになれない気持ちを、悟られたのかもしれないと渉は思った。

そういえば美菜とは挨拶以外の話をした記憶がない。

二人はカメラマンの要求通りにポーズをとり、表情を作った。

その間、美菜は自分から何かを話すことはなかったが、

スケジュールがきつくて疲れているのだろうと思い、渉はあまり気に留めなかった。


「きみと稽古をするのも初めてなのに、気にいらないなんて思ってないよ」

「そう・・・」

それきり美菜は何も言わなかった。



稽古が終わるとマネージャーの西村が、待ち構えたように聞いた。

「お疲れ様。どうだった?」

「スムーズに流れたけど、まだまだこれからだよね。沢渡さんも今日は何も言わなかったし」

「そうじゃなくて、美菜ちゃんとはどう?」

「正直、やりにくいよ。沙織とはなんかこう・・・全然違うんだよね」

「舞台は初めてだから?」

「そうじゃないんだ、ただうまく俺と噛み合わない感じ。初日だから仕方ないかな」

美菜に言われたことは西村には黙っていた。

お互いに対して苦手意識を持っていたのでは、いい芝居ができるわけがない。

映像の仕事と違い、舞台では大勢の観客の前で何度も同じことを演じるのだ。

そう美菜と何度も愛を語る・・・

渉はため息をつきそうになるのをこらえた。

まだ大丈夫、時間はあると自分に言い聞かせた。



渉は舞台の上では自分が演じている人物になりきる自信があった。

舞台の幕が上がった瞬間、自分の中に高野渉とは別の人格が現れる。

演じているはずの人物がもう一人の自分となって感情を持ち動き出す。

その間、高野渉は消えている。

しかしそれは一人では無理だ。

舞台を作り上げるメンバーの気持ちが一つになることが必須の条件である。

初日こそ気まずい思いをしたが、一緒に稽古を重ねれば美菜とも打ち解けあえる

と思っていた渉の思惑は外れた。

美菜の演技力は高く、申し分ないように見えたが渉と美菜の間には見えない深い溝がある。

そしていつまでたってもその溝は埋まる気配がない。


稽古を重ねるほど、演出の沢渡はどんどん不機嫌な表情を見せる回数が増え、

反対に口数は減った。

衣装合わせの後、渉と美菜は沢渡に呼ばれた。


渉が着替えて廊下に出ると美菜と鉢合わせした。

二人は黙ったまま沢渡の待つスタッフルームへ行き、ドアをノックした。

沢渡は二人に椅子にかけるように勧め、腕組みをしたまましばらく黙っていた。

やがて渉と美菜に厳しい視線を投げてから沢渡が口を開いた。

「二人でさ、じっくり話をしてみてよ。技術でこなそうとしたってだめなんだよ。

 今のお前たちの芝居で感動する人だっているだろうけど、それで満足か?俺はいやだね。

 沢渡一樹の演出の舞台がこんなんじゃ幕を開けられない」

「はっきり言ってください。私がいけないってことですか?」

美菜が言った。

「君たちが愛を語っても嘘くさいんだよ。芝居だからもちろん全部嘘なんだけど、
 
 舞台の上ではもっと本気でお互いを求めてよ」

また重い沈黙の時が流れた。

「渉、お前だってわかってるだろ?段取り芝居なんかするんじゃねぇよ。二人が同じところを目指さなきゃ

 上手な演技はできても人の心に残る舞台なんてできないんだよ」

沢渡の目はごまかせない。
 
渉は情けなくて、自分に腹がたった。

「確かに僕たちの気持ちが通じ合っているとは言えません」

渉が言うと沢渡は重そうなショルダーバッグを肩にかけ立ち上がった。

「わかってるじゃない。そういうことだよ。じゃ俺の話は終わり」

沢渡が出て行って、美菜と渉が残された。


「俺たち台詞以外の会話ってほとんどしたことないよね」

美菜は黙って頷くと、視線をテーブルに落としたまま渉に聞いた。

「高野さんは私のことどう思ってるの?」

「どうって?」

「嫌いでしょ。わかるもん」

「前にも言ったけどそんなことはないよ。もし、そう思わせていたならごめん。

 ただ確かに苦手意識はあった。でも今は心から一緒にいい仕事をしたいと思ってる。ほんとだよ」

「よかった。ずっと私と仕事するのが嫌なんだと思ってたの」

「もっと早くこうやって話せばよかったね。そうすればへんな遠慮なんてしないで芝居できた」

「じゃぁ、一気に二人の距離を縮めない?」

美菜は穏やかな、それでいて何かを決心したような口調でそう言って立ち上がった。

「距離を縮める?」

渉が美菜の言葉の意味を図りかねていると、美菜が渉の手を取って立たせた。

まっすぐに渉を見つめる美菜の瞳は少し潤んでいて、泣いてしまうのではないかと渉を

内心慌てさせた。

美菜は渉に両腕をまわして、肩にもたれかかった。

稽古の時のように、抱きあう演技ではなく本当に体を預けてきた。

渉も自然と美菜の体を抱きとめた。

美菜の柔らかな髪が頬に触れ、体温が伝わってくる。

他人と体を触れ合う緊張が少しずつ解けていく。


「忘れてしまったあなたのぬくもりをもう一度感じたいの。抱きしめて」

引き裂かれた二人が数年後に再会した時のヒロインの台詞だ。

渉は迷わず美菜にまわした腕に力を込めた。

まるで今までに何度もそうしてきたような気がする。

美菜の髪に頬を摺り寄せ、目をつぶると

腕の中の彼女を愛おしいと思う気持ちが自然とこみ上げてきて、

それが高野渉の気持ちなのか演じる役の感情なのかわからなくなった。

でもそんなことを思ったのはほんの一瞬で、

ただ心のままに美菜を抱きしめてぬくもりを感じていたいと思った。


やがて二人は体を離して見つめあうと長いキスを交わした。


  -----------つづく------- 3話へ
1話から読みたい方はこちら



実は妄想ドラマを始めるのはかなり迷ったんですけど、

スパイラル聴くとね、勝手にストーリーが

しかしこの先は悩む~~~どうしましょ?

ではまた



  


コメント
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