僕は、重い扉を開け、店の中に入っていく。
重厚な木のカウンターが左、真鍮の手摺を挟んで一段下には低い丸テーブルとイスが数十セット並んだ客席が右手に見える。入り口で左のカウンターか右手のテーブル席かを客がチョイス出来る様になっている。
客席は数十席有るテーブル席は勿論、カウンター席も埋まっている。かなり高級なジャズ・クラブの様だが、この御時世にこの集客って凄いなぁ・・と素直に驚きを感じる。
僕は緩やかなスロープを降りて行き、テーブル席の間を潜り抜け奥のステージに向う。僕の知り合いのミュージシャンが準備している。リーダーの先輩ミュージシャンに声を掛ける。「お久しぶりです、宮地です。遊びに来ました。1曲吹かせてもらえませんか?」思わぬ答えが返ってきた。「君、誰だっけ?」
多少のショックを受けるも、その人と何処で共演したかなど記憶を辿り、思い出話などをする。「あぁ、そんな事も有ったねぇ。確か、初めて会った時の印象は良かったけど、何年か前にやったあの時は、ねぇ・・。(苦笑)」
他のミュージシャン達も知り合いだ。僕の年下のミュージシャン達は一応挨拶してくれる。
気が付いたら、僕はステージに立っていて満員の客席に向ってサックスを構えている。曲が始まった。僕は心中穏やかではない。(何やるんだろう?)とドキドキしている。横に立っているテナー奏者がテーマを取りだした。曲は聴いた事が有るけど、何だっけこれ?ジャズ・メッセンジャーズのマニアックな曲?そのテナー奏者を見てみると、あれ?大学時代にドラム叩いてた後輩だ。なんでここに?っていうか、この曲は?最初のコードがトニック・マイナーで次は4度マイナー?あれ、違う!転調してる。いきなりソロが回ってくる。何一つ正しい音が吹けずに戸惑ってばかりの僕が、そこで立ち尽くしているだけ。バンド内は勿論、客席の冷ややかな目を感じながら、いたたまれずステージを降りる。
気が付いたらとっくに客は引けて、リーダーの人も僕に目もくれずに帰ってしまっている。僕はガックリ肩を落としている。若いミュージシャン達が楽器を片付けている中、後輩ミュージシャンが声を掛けてくれた。「宮地さん、こんな日は風俗行って忘れましょうよ!今日、行きつけの店が割引のサービス・デーなんすよ!」
「そんなもん、行きたくねぇよ~~!!!」
・・・と、叫んだ所で目が覚めた。時計は朝8時半。
バークリー時代に似たような夢をよく見たが、最近はそんな悪夢は見ていなかった。今回は我ながら良く出来た悪夢だと思い、寝ぼけながら笑ってしまった。バークリー時代には、コンサート・ホールで演奏していると、客席に妻のアリスを伴ったジョン・コルトレーンが現れ、緊張のあまり吐き気がしてサックスの音が出ない・・という夢だった。それに比べりゃ、今回の悪夢はかなり現実的で、今までジャズ界で受けてきたイジメ(ここまで酷くはなかったけど。笑)もキチンと踏襲している。(笑)
ちなみに、そのリーダーの人も後輩ミュージシャンも、夢の中では顔馴染みなのに、今は何の楽器だったかを含め、誰だか分からない。ま、そこが夢なんだけど。
バークリー時代に、そういった夢の話をタイガー大越さんにしたところ、「めちゃくちゃ練習してる奴はそういう夢を見るんだよ。」と言われた。そっか、最近よく練習してるからそんな夢見たのかな。強迫観念から練習を重ねるし、悪夢も見るわけだ。キャリアを重ねても、こう言うのって変わらないんだな・・と思うと自らを笑えてしまう。どうか、正夢になりませんように。(笑)
そういえば、そのバークリー時代の話、タイガーさんの奥さんが夢の中で物凄いテナー吹きで、腰が抜けるほど驚いたのだが、考えたらその10年後の僕のスタイルを吹いていた・・って記憶が有る。理想の自分を夢の中で他人の姿を借りて見ることも有る。またその他人ってのが、絶対サックス吹かなさそ~~な人なんだよね。新たな理想を持った今の僕はこれから色んな悪夢を見そうだ。(苦笑)
ちなみに、明日は荻窪ルースターで自分のバンドのライブ。
悪夢が現実にならぬ事を祈りたい。
重厚な木のカウンターが左、真鍮の手摺を挟んで一段下には低い丸テーブルとイスが数十セット並んだ客席が右手に見える。入り口で左のカウンターか右手のテーブル席かを客がチョイス出来る様になっている。
客席は数十席有るテーブル席は勿論、カウンター席も埋まっている。かなり高級なジャズ・クラブの様だが、この御時世にこの集客って凄いなぁ・・と素直に驚きを感じる。
僕は緩やかなスロープを降りて行き、テーブル席の間を潜り抜け奥のステージに向う。僕の知り合いのミュージシャンが準備している。リーダーの先輩ミュージシャンに声を掛ける。「お久しぶりです、宮地です。遊びに来ました。1曲吹かせてもらえませんか?」思わぬ答えが返ってきた。「君、誰だっけ?」
多少のショックを受けるも、その人と何処で共演したかなど記憶を辿り、思い出話などをする。「あぁ、そんな事も有ったねぇ。確か、初めて会った時の印象は良かったけど、何年か前にやったあの時は、ねぇ・・。(苦笑)」
他のミュージシャン達も知り合いだ。僕の年下のミュージシャン達は一応挨拶してくれる。
気が付いたら、僕はステージに立っていて満員の客席に向ってサックスを構えている。曲が始まった。僕は心中穏やかではない。(何やるんだろう?)とドキドキしている。横に立っているテナー奏者がテーマを取りだした。曲は聴いた事が有るけど、何だっけこれ?ジャズ・メッセンジャーズのマニアックな曲?そのテナー奏者を見てみると、あれ?大学時代にドラム叩いてた後輩だ。なんでここに?っていうか、この曲は?最初のコードがトニック・マイナーで次は4度マイナー?あれ、違う!転調してる。いきなりソロが回ってくる。何一つ正しい音が吹けずに戸惑ってばかりの僕が、そこで立ち尽くしているだけ。バンド内は勿論、客席の冷ややかな目を感じながら、いたたまれずステージを降りる。
気が付いたらとっくに客は引けて、リーダーの人も僕に目もくれずに帰ってしまっている。僕はガックリ肩を落としている。若いミュージシャン達が楽器を片付けている中、後輩ミュージシャンが声を掛けてくれた。「宮地さん、こんな日は風俗行って忘れましょうよ!今日、行きつけの店が割引のサービス・デーなんすよ!」
「そんなもん、行きたくねぇよ~~!!!」
・・・と、叫んだ所で目が覚めた。時計は朝8時半。
バークリー時代に似たような夢をよく見たが、最近はそんな悪夢は見ていなかった。今回は我ながら良く出来た悪夢だと思い、寝ぼけながら笑ってしまった。バークリー時代には、コンサート・ホールで演奏していると、客席に妻のアリスを伴ったジョン・コルトレーンが現れ、緊張のあまり吐き気がしてサックスの音が出ない・・という夢だった。それに比べりゃ、今回の悪夢はかなり現実的で、今までジャズ界で受けてきたイジメ(ここまで酷くはなかったけど。笑)もキチンと踏襲している。(笑)
ちなみに、そのリーダーの人も後輩ミュージシャンも、夢の中では顔馴染みなのに、今は何の楽器だったかを含め、誰だか分からない。ま、そこが夢なんだけど。
バークリー時代に、そういった夢の話をタイガー大越さんにしたところ、「めちゃくちゃ練習してる奴はそういう夢を見るんだよ。」と言われた。そっか、最近よく練習してるからそんな夢見たのかな。強迫観念から練習を重ねるし、悪夢も見るわけだ。キャリアを重ねても、こう言うのって変わらないんだな・・と思うと自らを笑えてしまう。どうか、正夢になりませんように。(笑)
そういえば、そのバークリー時代の話、タイガーさんの奥さんが夢の中で物凄いテナー吹きで、腰が抜けるほど驚いたのだが、考えたらその10年後の僕のスタイルを吹いていた・・って記憶が有る。理想の自分を夢の中で他人の姿を借りて見ることも有る。またその他人ってのが、絶対サックス吹かなさそ~~な人なんだよね。新たな理想を持った今の僕はこれから色んな悪夢を見そうだ。(苦笑)
ちなみに、明日は荻窪ルースターで自分のバンドのライブ。
悪夢が現実にならぬ事を祈りたい。
聴きに来た客「一曲吹かせて下さい。」
宮地「君、誰だっけ?」
若い時に色々厳しい愛のムチを受けてきたので、逆にそういう人には気を遣ってしまいますよ。(笑) 特に演奏をお願いする若手には気を遣いまくりです。
そういえば、東京ではあまりそういうイジメ的なものはあまり無かったなぁ。もっと陰湿な妬みそねみ、陰口はたくさん有るようですけど。(苦笑)
昨夜のライブは結構演奏が気に入ってるんです。少し理想に近づいて来た感じかな。メンバーは相変わらず素晴らしいし。柳君もこれまたドンドン良くなってきてるし。早いなぁ、若手の成長は・・。(笑)
でも、独り反省会の後にクリス・ポッターを聴いて見ると、やはりそれでも、自分の100倍凄いので再び凹みましたけど。マゾですねぇ、僕。
デジャヴゥ‥‥