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シビル・ウォー

2024-11-08 14:41:05 | 活弁見聞録

ズレ:「アメリカ社会の分断が指摘されてる昨今だけにトランプさんみたいな大統領が出現して内戦に至る経緯から描かれるのかと思いきや設定はいきなり内線末期から始まって、さしずめサイゴン陥落やチャウシェスク政権壊滅に立ち会うような戦場ジャーナリストのロードムービーっぽいストーリーになってるぜ。

 今の戦場取材手法がどんな様子になってるかは定かならねどこの映画での扱い方は第二次世界大戦からベトナム戦争の頃を彷彿とさせる趣で、若手フォトグラファーが過酷な状況の中で次第に成長して逞しく活動する描写は年配の日本人なら漏れなくサムライフォトグラファー沢田カメラマンの生涯を思い起こすんじゃねぇか。

 シビルウォーの意味するところは戦争による市民生活への悲惨な影響ってことらしく刺激的なシーンが続くものの、ウクライナ戦争やガザ紛争が続いてる現実の前ではなおフィクションとしてヌルめに表現されてると感じるくらいで作品の内容とは別につい暗澹たる気分になっちまうわな」

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もしも徳川家康が総理大臣になったら

2024-10-08 22:35:02 | 活弁見聞録

つれ:「公開当初はSFシチュエーションコメディの映画化ってことだったのが上映期間終盤に岸田総理の唐突な退陣表明が飛び出したお陰で、突然コロナに斃れた訳ではないものの図らずも早急に時期総理たる自民党総裁を選出するてぇ現実と妙にリンクした稀有な作品とも評されるかもしれないねぇ。

 原作は存じ上げなかったんで大臣となる偉人の人選には異論もありそうだと思ったら映画のサイズに合わせてか2021年発表の原作からはだいぶ脚色されて登場人物もコンパクトになってるようだけど、歴史上の業績を踏まえながらの偉人ジャーズ名言の使いどころや今となってはコメディそのもののコロナ狂騒の描写は存分に笑えるとこだよ。

 とはいえただのコメディには終わらずSNSが発達した中で民主政治から独裁体制が生じるナチスドイツのような危険性に警鐘を鳴らすところが原作ものらしい深みながら、信長・秀吉・家康と続いた戦国末期と比べたらそれほどに人心を魅了するカリスマ性や実行力のある総理が登場するこたぁなさそうなのを喜ぶべきか悲しむべきかだねぇ」

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フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

2024-09-08 14:18:20 | 活弁見聞録

ズレ:「一口でコメントするなら題名からしていかにもアメリカ映画らしいコメディ仕立ての陽気なラブロマンスってことになりそうだけど、アポロ11号の月面着陸はフェイクだったてぇ都市伝説を借景にしてるだけに道具立てからしてスケールの大きさは文字通り見上げたもんだわな。

 水も漏らさぬ緻密なフェイク画像が仕上がる一方で諸々の管理も厳しくなってる今のデジタル社会じゃ荒唐無稽でも、アナログに頼るしかなかった頃のドタバタ感や世間のユルさは往時の空気感を知る同時代人ほどリアリティのあるエピソードとして納心がいくんじゃねぇか。

 もう半世紀以上も前の出来事ながらおそらく世界中が一斉に前向きな夢や希望を抱いたイベントは絶後にして、既に軒並み高齢者の域に達してるTVの月面着陸放送にかぶりついた記憶がある方なら随所に実際の映像も流れるこの作品で当時の感興が蘇ること請け合いだぜ」

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フェラーリ

2024-08-08 19:37:14 | 活弁見聞録

つれ:「既にフェラーリのブランドを確立して愛息を失った後の一時期を中心に据えたストーリーで、威圧感溢れるエンツォ御大ご健在の頃のお姿を覚えてる方ならまずもって主演俳優さんの堂々たる御大ぶりに唸らされるんじゃないかぃ。

 題名が意味するところはフェラーリてぇ車でなくフェラーリファミリーの人間模様にスポットを当てた愛憎劇のようだけど、当然にその頃のマシンやレースシーンがふんだんに登場して当時の欧州じゃ自動車は危険と隣り合わせのロマンとして一般社会に広く受け容れられてたのがヒシヒシと伝わってくるよねぇ。

 今の自動車は安全性を第一に経済性や快適性がウリになって動力性能より環境性能が評価されるのも時代の要請ってことだろうけど、それに伴ってメーカー・ユーザー共に高性能車に愛息ディーノの名を冠するような思い入れが薄くなってそうなのは車にロマンを覚えたオールドタイマーにとっちゃ寂しいとこだょ」

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関心領域

2024-07-07 15:02:12 | 活弁見聞録

ズレ:「アウシュヴィッツ絶滅収容所と塀一つ隔てて優雅な生活が営まれてるのは作劇上のフィクションかと思いきや史実通りだそうで、そうと分かれば勤務公署に施設長の官舎が隣接してるのは格別不思議でもないだけに業務目標を粛々と履行する実務者側からのホロコーストの描写にますます慄然とするばかりでぃ。

 収容所内の出来事は一切登場しないものの冒頭から不安を掻き立てる画作りに瀟洒な邸宅生活シーンにはずっと流れてる収容所側の剣呑な音声がBGMになってて、何が起こったかは先刻承知の観衆にとっちゃ主人公側の満ち足りた日常の破綻が訪れる予感でハラハラするホラー映画の趣も漂ってるぜ。

 事後には明白な理不尽でも渦中にあっては鬼畜の所業だろうと組織立った公務の感覚で実績を挙げつつ何の危機感もなく平穏な市民生活を送れる人間性の闇が事実として浮かび上がってくるだけに、けしてアウシュヴィッツに限った話でなく当時は被害者だったユダヤがイスラエルとなった今は加害者になってるガザの惨禍も同じ構図じゃなかろうかと考えさせられるわな」

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ボブ・マーリー:ONE LOVE

2024-06-07 17:38:00 | 活弁見聞録

つれ:「音楽家の伝記ものも映画の定番ネタながらこの作品はバイオグラフィーとしてのスパンは短く、既にミュージシャンとして名を成したマーリーさんがジャマイカを出てからアルバムが大ヒットしてジャマイカに戻るまでを濃密に描いてるねぇ。

 歌詞の内容を吟味せずBGM的にレゲエを耳にしてた身としちゃ軽快なリズムに明るいメロディてぇ印象だけだったけど、本編で流れる数々の名曲には漏れなく字幕がついてその歌が生まれた背景がストーリーになってるから今更で汗顔の至りながらレゲエの深みを勉強させていただいたよ。

 レコードが普及して頻繁に放送で流れるようになって以降フォークからロックとスタイルは変遷しつつもアーティストの歌が政治状況にも影響したのはおそらくこの頃が最後で、無論今でも楽曲には思想が込められてるとしても圧倒的な商業ベースに呑み込まれて伝わりにくくなってるのかもしれないねぇ」

 

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オッペンハイマー

2024-05-07 21:09:23 | 活弁見聞録

ズレ:「アメリカじゃバーベンハイマーてな抱き合わせ上映だったのを本邦は原爆てぇテーマを慮って同時公開を見合わせた曰く付きの作品も、アカデミー賞に輝いたからには公開しない訳にはいかないってことかようやく日の目を見たのが何よりだわな。

 かねてドキュメンタリーで広く伝わるオッペンハイマー博士の業績行状のうち原爆開発に触れるのは当然ながらストーリーの中心は先端科学を借景にした政治的暗闘に置かれてる趣で、博士の心象風景に沿って時制が行き来する長尺の大作がモノクロの多用で一層重厚な雰囲気になってるんじゃねぇか。

 米国に原爆肯定論があるのは映画にも描かれてるけど否定論一色の本邦の視点とすりゃ原爆・情報漏洩・赤狩りと重苦しい題材ばかりだから、本来がその渋味を中和する甘味がバービーだとすりゃ日本でも抱き合わせ公開してればバービーの興行収入が伸びたかもしれねぇぜ」

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ARGYLLE/アーガイル

2024-04-08 20:10:09 | 活弁見聞録

つれ:「映画館まで足を運んでくるからには勿論キングスマンもお好きでしょてぇ前提で無論それ以上に盛り上がって貰いますとの同一制作陣の意欲がスクリーンに漲ってて、ストーリーとしてはキングスマンとは別物だけどティストはキングスマン調を踏襲してるから肩肘張らずに笑えるスパイアクション好みには心憎いばかりの作品だねぇ。

 と言ってキングスマンシリーズに馴染みのない方には何のことやらだろうけど当然キングスマンを知らなくても全く問題ない展開にアクションやクスグリが満載されてるから、先にこっちを観てこのノリがお気に入りなら後からキングスマンを観ると二度オイシイんじゃないかぃ。

 観る分にはオモロイ限りながらこの手の映画はネタバレが艶消しだからコメントするのは難しいところで、一流スパイは世界を騙すてぇ劇中の台詞どおり一流スパイコメディは観客をはぐらかすてな随所に施されてる細かい仕掛けを白紙の状態でお楽しみいただければ幸いだょ」

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ダム・マネー ウォール街を狙え!

2024-03-10 10:03:06 | 活弁見聞録

ズレ:「2020年に実際に起きた出来事の映画化だからコロナ禍もネタにしときましょうてなクスグリどころも心得てて、事実だからジョークとはいえないけど喜劇というにはシビアな視点も盛り込まれてるブラックコメディてな趣だわな。

 何より現代の世相を如実に反映してるのは株式投資の対象になってる会社がほとんど登場せずに個人小口投資家群と大口ヘッジファンドとの応酬だけでストーリーが成立するところで、生産活動とは遊離した資本の運動を如実に描き出してるんじゃねぇか。

 マルクス先生の頃は富を生み出す生産が資本主義には不可欠で搾取があろうと社会全体としては豊かになってったけど、生産とは関わりなく大資本が小資本を搾取して富を生み出すのが当世資本主義の主流だとすると社会全体の先行きに不安を覚えるばかりでぃ」

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2024-02-08 17:01:51 | 活弁見聞録

つれ:「スパスパ首が飛ぶてぇ前フリからして本能寺秀吉黒幕説ベースのアウトレージ戦国版ハードボイルドと当て込んでったところが、北野武監督作品というよりはビートたけし監督作品といった方がピッタリくるくらい存外に笑えるツボがテンコ盛りだったよ。

 落語の始祖と言われる曽呂利新左衛門を狂言回しに配したうえで居並ぶ侍口調の配下武将に対して信長は全編尾張言葉しか話さないって設定がお笑いチックだし、見終わってみると北野組とも言うべき達者な役者さんの実年齢に比して監督自身が秀吉役ってとこから既に出オチの大ボケだったかとしてやられて膝を打つようじゃないかぃ。

多分に監督の遊び心が感じられる作品ながら自らも出演した御法度や戦場のメリークリスマスを遺した大島渚監督へのオマージュらしき趣もあり、次回作はどうなるか分からないけど北野武監督ビートたけし主演作としては一つの集大成とも見えてくるねぇ」

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