つれ:「まずメイクの技術に唸らされる間もなく声色から立ち居振る舞いまで往時の印象そのままに迫真の演技と言っちゃ迫が余計だろうってくらいのサッチャー女史なりきりぶりにさらに唸らされ、当代きっての大女優にこの役柄はあたかも鬼に金棒の如く他のアカデミー主演女優賞候補をなぎ倒したのも当然だねぇ。
けして記憶に遠くないご存命の元リーダーを描いているだけにことさら話を盛ることなくストーリーとしてはむしろ恬淡でドキュメンタリーとも思えるほどだけど、現役時代の強固な意志表明と老境の身の処し方の対比が実にドラマチックで、鉄の女の涙てぇ情緒的な邦題も伊達じゃないほどに生身の女性の魅力が滲み出てるんじゃないかぃ。
とはいえ本邦の時節柄はどうしても女の一生というよりは国の指導者としての見方になるのは避けがたく、国難に当たっては信念に裏打ちされた無私のリーダーシップが要求される中でのサッチャー元首相と民主政権歴代首相の対比に思いが至っちまうのが口惜しいようだょ」