goo

2024-02-08 17:01:51 | 活弁見聞録

つれ:「スパスパ首が飛ぶてぇ前フリからして本能寺秀吉黒幕説ベースのアウトレージ戦国版ハードボイルドと当て込んでったところが、北野武監督作品というよりはビートたけし監督作品といった方がピッタリくるくらい存外に笑えるツボがテンコ盛りだったよ。

 落語の始祖と言われる曽呂利新左衛門を狂言回しに配したうえで居並ぶ侍口調の配下武将に対して信長は全編尾張言葉しか話さないって設定がお笑いチックだし、見終わってみると北野組とも言うべき達者な役者さんの実年齢に比して監督自身が秀吉役ってとこから既に出オチの大ボケだったかとしてやられて膝を打つようじゃないかぃ。

多分に監督の遊び心が感じられる作品ながら自らも出演した御法度や戦場のメリークリスマスを遺した大島渚監督へのオマージュらしき趣もあり、次回作はどうなるか分からないけど北野武監督ビートたけし主演作としては一つの集大成とも見えてくるねぇ」

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ナポレオン

2024-01-07 21:49:16 | 活弁見聞録

ズレ:「稀代の傑物として数多の映画に描かれてるナポレオンをリドリー・スコット監督がいま取り上げる意図は奈辺に有りやと興味が湧くところで、同監督史劇の傾向からして特定のエピソードを深掘りするのかもと勝手に予想してたから青年将校デビュー以降セントヘレナで没するまでがジョセフィーヌとの愛憎劇を軸にしたオーソドックスな通史に仕上がってたのには意表を衝かれた感じでぃ。

 長尺でもそれだけの期間を描くとなると個々の出来事について由来や因果の説明が少なくなるのは当然ながら歴史的に著名なトピックスはほぼ時系列どおりに網羅されてて、映画を見た後に改めてフランス革命以降の歴史をおさらいしたくなるって点じゃ世界史教育作品とも言えるわな。

 とはいえやはり白眉は黒澤明監督が予算の制約なく設楽原決戦を撮ったらこんな感じになったんじゃなかろうかと感嘆する圧巻のワーテルロー大スペクタクルで、次第に題材の時代が新しくなってる風なスコット史劇の今後の展開が楽しみだぜ」

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SISU/シス 不死身の男

2023-12-08 20:16:08 | 活弁見聞録

つれ:「荒涼とした風景のなか寡黙な主人公が狼藉を重ねる荒くれ者と対決する・・とくればまんまマカロニウェスタンの世界、とは言ってもアメリカやメキシコを舞台にした西部劇ながらイタリア界隈で撮影してたのとは違ってこちらの景色は紛う方無きフィンランドそのもの。

 フィンランドが舞台でナチスドイツとの抗争となると時節柄ウクライナ戦争との暗喩もあるのかと思いきやそんな堅苦しさは微塵もないアクションに徹してて、フィンランド映画ながら台詞はほとんど英語ってとこにも世界市場を意識して娯楽に徹した作品てのが窺えるよねぇ。

 世知辛い世の中だけにウクライナ戦争に続いてガザ紛争も深刻化するなかで戦争娯楽作はいかがなものかてな声が上がるかもしれないけれど、戦車や飛行機はリアルな再現でなく有り物を流用したようなアバウトさも含めてツッコミどころ満載のヒーローもの時代劇として楽しんでいただきたいもんだょ」

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バッドランズ

2023-11-07 16:05:16 | 活弁見聞録

ズレ:「原作モノだけに特殊詐欺の内幕が克明に描かれるストレートなフィルムノワールで、過激なアクションは少なくとも前半のドキュメンタリータッチが伏線となって後半のサスペンスタッチを盛り上げる構成が息をもつかせぬ緊張感を醸してるわな。

 ダークな題材や登場人物の設定がリアルだからこそともすれば陰鬱な気分になりそうなところながら、それを救ってるのがキャスティングの妙味で思い掛けない役者さんが思い掛けないチョイ役的に登場するのがいい塩梅のアソビになってるんじゃねぇか。

 あくまでフィクションとはいえ匿名・流動的なトクリュウ犯罪が蔓延してる昨今は現実の社会でもそのまま展開してそうなストーリーには、暗黒渡世とは縁が無い身の上でもすぐそこに現存してる脅威として慄然とするばかりでぃ」

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グランツーリスモ

2023-10-07 21:13:09 | 活弁見聞録

つれ:「高精度レースシミュレータのゲーマーが実車レーサーになった実話の映画化で日本製のゲームに日本車でのレースだから画面のそこかしこに日本感が溢れるものの、あくまで洋画だから日本語のシーンが何となくぎこちなく感じられるところはゲーム風と言えばゲーム風なご愛嬌かもよ。

 タイトルからしてゲーム部分に比重を置いたストーリーかと思いきや実車レーサーとして活躍するまでの過程をメインに据えた辺りはトップガンに愛と青春の旅立ちをミックスしたレース版の趣で、さらには家族愛の賛歌まで盛り込まれるとゲームやレースに興味がなくても見応えのあるオーソドックスな本格派青春ドラマの一丁上がりだょ。

 ゲームやレースに負けず劣らずの新鋭技術を駆使してるだけにドラマを抜きにしても盛り上がれるほどレースシーンの迫力も特筆ものだから、遠隔操作のドローンで戦争する時代ならゲーマーからレーサーになっても不思議はないとはいえそう一筋縄にはいかないてぇリアルなシビアさがヒシヒシと伝わるんじゃないかぃ」

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バービー

2023-09-06 21:05:31 | 活弁見聞録

ズレ:「アメリカじゃ同時公開作品と抱き合わせたバーベンハイマーてなコピーがウケたところに原爆雲の絵柄があしらわれて物議を醸したのが前宣伝になったかは定かならねど、バービー人形が主人公のお伽噺チックなファンタジーなのに中東じゃ上映禁止になったりと映画の外側での話題でも記憶に残る作品だろうよ。

 そんな背景は抜きにしても映画館まで足を運ぶくらいのコメディ好みなら冒頭の掴みでいきなり深く印象に刻まれるのは間違いなく、バービー世界と人間社会が併存する荒唐無稽な設定だけにユルさが目立つとこもなしとはしないもののそれも含めて屈託なく笑える作品に仕上がってるわな。

 バービーに郷愁のある世代をイジッて笑かそうてぇ姿勢を貫徹しつつもそれがそのまま社会風刺としても成立するところが上映禁止にもなる所以と推察され、バービー人形の普遍性と併せて一見童話風ながら社会思想に裏打ちされてるガリバー旅行記のように末永く歴史に残るかもしれねぇぜ」

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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-08-07 21:46:38 | 活弁見聞録

つれ:「シリーズ最終作と自他共に認めるだけに出演者制作陣こぞって力が入ったらしく、手に汗握るアクションとファン心をくすぐる小ネタをテンコ盛りにした大仕掛けな遺物アドベンチャーてぇ定食メニューがフォーマットはそのままにひときわ豪勢な盛り付けでテーブルに運ばれてきた感じだねぇ。

 主人公を看板にしたシリーズものはその役者さんも等しく時間が経過するから長くなるほど主役周りの動きが渋くなりがちだけど、スタントにCGやらAIを駆使した最新技術を以てすればインディ・ジョーンズはあくまで若々しく第一作から40年余も経ってるって方がフィクションみたいじゃないかぃ。

 同時代性がある単一キャラクターのオリジナルストーリーとなれば本邦にはフーテンの寅さんてぇ長寿の金字塔があるものの洋画じゃインディ・ジョーンズに比肩すべきシリーズが見当たらないだけに、存分に堪能しつつも新作を望めない寂しさは禁じ得ないとこだよねぇ」

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トゥ・レスリー

2023-07-07 21:08:07 | 活弁見聞録

ズレ:「高額クジに当たった小市民が持ち付けない大金で身を持ち崩した後日譚のストーリーはアメリカじゃ単館公開で興収は僅か350万円也だったそうで、それがアカデミー主演女優賞ノミネートまで上り詰めるなんざ映画制作としては立派に一山当てたシンデレラストーリーだぜ。

 当然低予算の作品だったようで舞台のバリエーションは限られてるしタップリ金を掛けましたてぇドヤ顔チックな道具立ても登場しないけれど、だからこそ相対的に主役の落魄感がクッキリと浮かび上がって格別の出来事や目を引くアクションがなくてもジワっと浸みてくる秀逸なロードムービーになってるんじゃねぇか。

 土地柄や時代背景のディティールは全く異なるものの市井の人々が織りなすごく普通の日常に家族愛や隣人愛を盛り込む作風は古き良き邦画の家族物語を見るようでもあり、本邦の興収がどうなるものかは定かならねど日本じゃ存外にオールドファンの琴線を揺らしそうだわな」

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TAR/ター

2023-06-09 11:37:26 | 活弁見聞録

つれ:「ケイト・ブランシェット丈当て書きのオリジナル脚本だから事前の情報は公式サイトレベルの梗概だけで、そこから察するにオーケストラ版白い巨塔じゃなかろうかと見当をつけていったのが映画には珍しく冒頭に延々とタイトルロールが流れるスタイルでいきなり意表を突かれちまったよ。

 逆に予め大筋を吞み込んでないと何のネタ振りか分からないほど中盤に至るまでは衒学的な音議論の応酬が表面に出てくるから、原語で筋を追える方やバッハから現在の流行先端に至る音楽産業の推移に造詣の深い方は主人公のセリフ回しにはシビれるとこが多いのかもしれないねぇ。

 LGBTや各種ハラスメントの今日的な要素をふんだんに盛り込みながらも全般的に因果関係に踏み込むシーンや状況ごとの説明台詞は少なく、さながら行間の余白にイマジネーションを働かせる散文詩のような展開がいかにも芸術を背景にした映画らしいんじゃないかぃ」

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AIR/エア

2023-05-08 21:25:46 | 活弁見聞録

ズレ:「エア・ジョーダンの爆発的ヒットからの業界ジャイアントキリングでナイキさんが大躍進を遂げたてぇ結果は誰もが承知してるだけに、成功までの苦心譚が安心して見ていられるエンターテインメントに仕上がってるわな。

 マジックはタネや仕掛けが分からないからこそ純粋にハラハラドキドキが楽しめてそれを知っていればいたで今度はいかに上手くやり仰せるかを別の視点から冷静に観察できるってもんで、予め犯人を明示して展開する倒叙ものミステリーとも一脈通じるようでぃ。

 登場するのは実在の人物で今でも御活躍となればエピソードもほとんど実話なんだろうけど、生き馬の目を抜くアメリカンスポーツビジネスも決め手は存外に浪花節調だとすると構造改革とやらで義理人情のジャパニーズビジネススタイルを放棄したのはいささか早まったかもしれねぇぜ」

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