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トゥ・レスリー

2023-07-07 21:08:07 | 活弁見聞録

ズレ:「高額クジに当たった小市民が持ち付けない大金で身を持ち崩した後日譚のストーリーはアメリカじゃ単館公開で興収は僅か350万円也だったそうで、それがアカデミー主演女優賞ノミネートまで上り詰めるなんざ映画制作としては立派に一山当てたシンデレラストーリーだぜ。

 当然低予算の作品だったようで舞台のバリエーションは限られてるしタップリ金を掛けましたてぇドヤ顔チックな道具立ても登場しないけれど、だからこそ相対的に主役の落魄感がクッキリと浮かび上がって格別の出来事や目を引くアクションがなくてもジワっと浸みてくる秀逸なロードムービーになってるんじゃねぇか。

 土地柄や時代背景のディティールは全く異なるものの市井の人々が織りなすごく普通の日常に家族愛や隣人愛を盛り込む作風は古き良き邦画の家族物語を見るようでもあり、本邦の興収がどうなるものかは定かならねど日本じゃ存外にオールドファンの琴線を揺らしそうだわな」

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TAR/ター

2023-06-09 11:37:26 | 活弁見聞録

つれ:「ケイト・ブランシェット丈当て書きのオリジナル脚本だから事前の情報は公式サイトレベルの梗概だけで、そこから察するにオーケストラ版白い巨塔じゃなかろうかと見当をつけていったのが映画には珍しく冒頭に延々とタイトルロールが流れるスタイルでいきなり意表を突かれちまったよ。

 逆に予め大筋を吞み込んでないと何のネタ振りか分からないほど中盤に至るまでは衒学的な音議論の応酬が表面に出てくるから、原語で筋を追える方やバッハから現在の流行先端に至る音楽産業の推移に造詣の深い方は主人公のセリフ回しにはシビれるとこが多いのかもしれないねぇ。

 LGBTや各種ハラスメントの今日的な要素をふんだんに盛り込みながらも全般的に因果関係に踏み込むシーンや状況ごとの説明台詞は少なく、さながら行間の余白にイマジネーションを働かせる散文詩のような展開がいかにも芸術を背景にした映画らしいんじゃないかぃ」

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AIR/エア

2023-05-08 21:25:46 | 活弁見聞録

ズレ:「エア・ジョーダンの爆発的ヒットからの業界ジャイアントキリングでナイキさんが大躍進を遂げたてぇ結果は誰もが承知してるだけに、成功までの苦心譚が安心して見ていられるエンターテインメントに仕上がってるわな。

 マジックはタネや仕掛けが分からないからこそ純粋にハラハラドキドキが楽しめてそれを知っていればいたで今度はいかに上手くやり仰せるかを別の視点から冷静に観察できるってもんで、予め犯人を明示して展開する倒叙ものミステリーとも一脈通じるようでぃ。

 登場するのは実在の人物で今でも御活躍となればエピソードもほとんど実話なんだろうけど、生き馬の目を抜くアメリカンスポーツビジネスも決め手は存外に浪花節調だとすると構造改革とやらで義理人情のジャパニーズビジネススタイルを放棄したのはいささか早まったかもしれねぇぜ」

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フェイブルマンズ

2023-04-07 21:51:22 | 活弁見聞録

つれ:「巨匠自らメガホンを取った自伝的作品てぇと映画小僧版アメリカン・グラフィティみたいな感じに仕上がってるんじゃなかろうかと思ったら、家族の軋轢やユダヤ差別を正面から取り上げた骨太なファミリーヒストリーの趣だねぇ。
 いわゆる事実に着想を得たフィクションなんだろうから事の真偽は別として、父親の合理性と母親の感性を受け継いだところにアメリカ社会での人種的ハンデや映像産業が成長する時代背景が加わると独創的な映画監督が誕生するのかもよ。
 スピルバーグ監督が映画を職業とするまでの話だから一連の名作舞台裏が覗ける訳じゃないけれど、栴檀は双葉より芳しで幼少の砌から映画にどっぷりハマり込んだ様子は軽妙に描かれてて好きこそものの上手ってのがほのぼのと伝わってくるよねぇ」

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バビロン

2023-03-10 21:13:20 | 活弁見聞録

ズレ:「名は体を表すの格言通り冒頭の不道徳な享楽と頽廃が渦巻く群像シーンはソドムとゴモラのように不穏な空気が充満する乱痴気騒ぎで、フィクションの大袈裟なスモークとしても火種となるくらいにはサイレント時代の映画界は斯くも乱れてたのかもと驚かされらぁな。
 その後も役者や撮影のハチャメチャな舞台裏やトーキーに遷り変わる時代の悲喜交々がエキセントリックに描かれる中に今より苛烈だったであろうハラスメント批判も盛り込み、更にはフィルムノワール風なサスペンスまで加わって3時間を超す長尺を飽きさせない工夫がテンコ盛りだぜ。
 最後はオールドシネマパラダイスみたいなノスタルジーと実写フィルムのインサートで締め括る辺りには制作陣の映画愛が溢れ出してる感じが漂い、映画の歴史とコンテンツをギッシリ詰め込んだオールザッツムービー的な意欲作なんじゃねぇか」

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モリコーネ 映画が恋した音楽家

2023-02-07 16:59:20 | 活弁見聞録

つれ:「インタビュースタイルのドキュメンタリータッチ映画なら市民ケーンが思い浮かぶところをこの作品はタッチじゃなくドキュメンタリーそのものだから、それで3時間近い長尺てなぁいささかシンドイかもと思いきや案に反して存外あっという間にエンドロールを迎えちまったよ。
 思うに登場人物はいつも観客を意識してる音楽や映画のプロフェッショナルばかりだから俳優さんでなくとも自ずとコメントが劇的な構成になってるうえにほとんどがイタリア語で語られる抑揚自体が映画音楽のように心地よく、そこに絶妙なタイミングでモリコーネ作曲映画のシーンが挟まるのが時間を短く感じさせる所以かもねぇ。
 劇映画と違ってほとんど映像だけで推移する時間はなく台詞の積み重ねで展開する舞台劇のような塩梅だから字幕を追うのに忙しかったって面もありそうだけど、音楽理論やイタリア語に明るい方ならゆったりと一層奥深く楽しめる作品なんじゃないかぃ」

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ホイットニー・ヒューストン

2023-01-09 22:26:33 | 活弁見聞録

ズレ:「ミュージカルとは違うけどミュージシャンの伝記ものは当然に楽曲は不可欠だから、映画のストーリーに加えてその曲を聞いてた頃の自分のストーリーが重なってくるのが独特の醍醐味になってるわな。
 近頃の作品を振り返るとフレディ・マーキュリー、エルヴィス・プレスリー、ホイットニー・ヒューストンの若くして世を去ったお三方が続いて、画面から溢れ出る名曲の魅力に浸るほど神様も色艶のある歌声がお好みで早くお側に召してるんじゃないかてな思いも湧いてくるようでぃ。
 原題は I WANNA DANCE WITH SOMEBODYながら個人的にホイットニー・ヒューストンさんと聞いて思い付くのはボディガードのI Will Always Love Youとスーパーボールの国歌斉唱で、改めてジャージの演出と超絶技巧のアレンジで途方もない感動を呼んだアメリカ国歌がいささか羨ましくなっちまうぜ」

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ザ・メニュー

2022-12-08 21:10:41 | 活弁見聞録

つれ:「事前の情報とR15指定を併せて推測するに”注文の多い料理店”実写エグイ版じゃなかろうかと身構えつつもコメディティストもアリのグルメ映画風の滑り出しに油断してると、徐々に不穏な空気が立ち込めて中盤以降はジェットコースターが頂点から急降下する如き展開で息つく間もないくらいだょ。
 作風としては不条理サスペンス的な趣で、シェフを演じる役者さんの風貌がそこはかとなくビートたけし師匠を彷彿とさせるせいもあってか師匠が主演したバトルロワイヤルとか北野武監督のバイオレンス作品を思い起こすようじゃないかぃ。
 行き過ぎたグルメへの批判もテーマになってるようだけど、本邦の時節柄からすると登場人物がカルト教団の狂信性に翻弄される信者やそこに否応なく巻き込まれる家族縁者みたいに見えてくるのがタイムリーかもしれないねぇ」

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スペンサー ダイアナの決意

2022-11-08 21:15:04 | 活弁見聞録

ズレ:「題材からしてドキュメンタリータッチかと身構えてたらいきなり冒頭で寓話との断り書きをカマしてくるとおり、クリスマスイベント中のダイアナ妃目線での心理サスペンス的な独白劇調に仕立てられてるのに意表を突かれちまったぜ。
 少なくとも公表されてる範囲の経緯は世界中が周知の事実だからNHKさん風に言やぁたぶんこうだったんだろう劇場っぽく理解できるストーリーながら、実在のやんごとなき方々が登場するだけにそれぞれのお立場を慮るバランスには配慮が行き届いてるわな。
 エリザベス2世崩御直後の公開てのもタイムリーで女王陛下登場シーン自体は多くないとはいえ、比較のしようはないものの女王陛下ご健在のうちに拝見してたらまた違った印象を受けただろうかとの興味も湧くとこでぃ」

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ヘルドッグス

2022-10-07 21:33:10 | 活弁見聞録

つれ:「衝撃アクションで猛暑を吹き飛ばそうと申し合わせた訳じゃあるまいけれどこの夏場は洋画邦画ともに激しい銃撃モノの公開が続いてどれを観賞したもんかと迷った結果、NHK大河で座長を張って以降コメディ心豊かなアクションスターとして活躍されてる俳優さんの主演作を拝見させていただいたよ。
 原作のタッチは全く存じ上げないけれど映画としてはハードボイルドミステリーといった風情の仕立てになってて、極道の抗争に介入するアンダーカバーてぇ設定にふさわしく冒頭からスタッカートのように歯切れ良いドライなヴァイオレンスシーンの連続はさしずめ(仁義なき戦い+マッドマックス)× 令和版 てな趣だねぇ。
 そこにもってきて主役をはじめコメディテイストも達者な役者さんが勢揃いしてるからあくまで緊迫したストーリーの背後に表立っては出てこないユーモアが絶妙なパラレルワールドとして展開されてる風情で、いかにも夏らしくパッションフルーツが隠し味の激辛カレー感を楽しめるんじゃないかぃ」

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