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大河への道

2022-06-08 17:04:34 | 活弁見聞録

つれ:「タイトルが大河ときて中井貴一さんの主演となれば定番三谷コメディかと早合点したら立川志の輔師匠の既に高い定評がある創作落語の映画化だそうで、不勉強に恥じ入りつつも練り上げた話芸が原作だけに至って滑らかな筋の運びを堪能させていただいたよ。
 同じ役者さんが現在と過去で二役を演じる趣向は映画ならではのお楽しみだし、実写版だとまさに百聞は一見に如かずであの時代に精密な日本地図を作るのがどれほど大変な作業だったかが実感できるねぇ。
 この作品には忠敬さん自体は登場しないものの、源氏物語以外の実像はほとんど不詳な紫式部が本家大河ドラマに登場するくらいなら大偉業を成し遂げた経緯も詳らかな伊能忠敬物語が本当に大河ドラマになったって良さそうなもんだょ」

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ナイトメア・アリー

2022-05-09 16:18:52 | 活弁見聞録

ズレ:「最初に予告編を見た時の印象はエレファントマンの焼き直しかてな印象を受けたけど前時代的な見世物興行って背景が通じるだけで、おどろおどろしい修飾を取っ払ってみればこちらは純然たるサスペンスだわな。
 ストーリー的には降霊術詐欺の顛末ってことになるものの、全編に亘るダークなトーンに神秘的な虚飾や胡散臭さを鏤めて劇場がそのまま見世物小屋になったような雰囲気を醸し出してるのが達者な演者や制作陣の手腕の賜物なんじゃねぇか。
 その一方でそれぞれの見世物のタネについても漏れなく解説を加えて謎を謎のままにしとかないところはなかなか科学的な作りになってるうえにそれをあくまでさりげなく進行に融け込ませてるから、映画を楽しみつつトリックにも明るくなる学習教材的作品とも言えそうだぜ」

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ドリームプラン

2022-04-07 18:28:11 | 活弁見聞録


つれ:「この邦題にウィル・スミス主演でウィリアムズファミリー監修で製作されたと聞けば当然手放しに陽気なサクセスストーリーと思ったら、単純なステージパパ礼賛でなくアメリカ社会やジュニアスポーツのダークサイドも描かれた存外に硬派な作品だったよ。
 公開と時を同じくして北京五輪フィギュアスケートでのドーピング疑惑が騒動になって、ジュニアのうちから巨万の利権が渦巻く現代社会の状況じゃ選手の意思とは関わりないところで起こるべくして起こる問題なのが実感されるねぇ。
 ジャッキー・ロビンソンやモハメドアリがまだカシアスクレイだった頃の昔話でなく今もトッププレーヤーとして活躍してるウィリアムズ姉妹の出世物語なのに依然として人種格差社会は続いてて、そのガラスの天井を突き破ったからこその”King Richard”って原題がストンと腑に落ちるようじゃないかぃ」

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大怪獣のあとしまつ

2022-03-07 15:49:18 | 活弁見聞録

ズレ:「シンデレラや白雪姫がめでたしめでたしとなった後の物語的なノリで、怪獣モノはやっつけて大団円が定番なのに怪獣自体の脅威には全く触れることなく死骸となったとこからストーりーが始まるのはかつてない斬新さなんじゃねぇか。
 察するに東日本大震災に対応した民主党政権のドタバタぶりが直接のモチーフとなってる気配ながら、図らずもこの映画のお陰でコロナ対応のドタバタぶりもその轍を踏んでるのかもと気付かせていただいたような按配だわな。
 ディティール的には意表を衝いてSFコメディ史にその名を残す快作”エボリューション”に通じるところもあり、ファンタジーの体裁を凝らしつつ痛烈な社会批判を展開した不磨の風刺聖典ガリバー旅行記に映像で肉迫しようかてな大怪作とも言えそうだぜ」

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ハウス・オブ・グッチ

2022-02-10 14:31:01 | 活弁見聞録

つれ:「グッチファミリーのお家騒動を描いた原作の映画化権をいち早く獲得したリドリー・スコット監督の手にかかると、武具や甲冑は現れずともグラディエーターや最後の決闘裁判を彷彿とさせる骨肉相食む戦国絵巻の趣が漂ってるよねぇ。
 事実に着想を得たどころか事実そのものみたいなストーリー展開にはグッチ家が色を成してるそうで、スコット組とも言うべき達者な俳優陣にガガ嬢やパチーノ御大まで加わった華麗な布陣は巨万の富を築き上げたが故に内紛を招いた同族企業の脆さを一層際立たせてるようじゃないかぃ。
 そんな中にいきなり日本語の台詞や御殿場のブランドモールが飛び出してくるのはスコット監督ならではのご愛嬌かと思ったけど、バブルに踊ったブランド漁りが少なからグッチの繁栄を支えてたって意味合いならマネー・オブ・ジャパンの隆盛と凋落の物語にも重なってくるねぇ」

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キングスマン:ファースト・エージェント

2022-01-08 21:22:44 | 活弁見聞録

ズレ:「コネリー・ボンド時代の007テイストが色濃いキングスマンシリーズの最新作を長いこと楽しみにしてたもんで、キングスマン創設までのストーリーと雖も冒頭から前2作のような小洒落た台詞とキレキレのアクションが展開されると思い込んでたのがすっかり豈図らんやでぃ。
 まだキングスマンてぇ組織がない状態の話だから当然っちゃ当然ながら前半はキングスマンテーラーのスーツみたいにカチッとした作りの歴史劇仕立てになってて、第一次世界大戦を巡る国際情勢を借景としたフィクションとはいえ塹壕戦の描写なんざさしずめ西部戦線異状なし辺りを彷彿とさせる文学映画の趣だぜ。
 中盤からはいかにもキングスマンシリーズらしい進行になってエグいアクションやクスグリネタが満載だから従前の作風ファンとしても不足はなく、二本立て同時上映を一本で見るような一粒で二度オイシイ作品なんじゃねぇか」  

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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

2021-12-08 21:45:36 | 活弁見聞録

つれ:「これもコロナがなけりゃもっと早く公開されたんだろうけど、従前の007シリーズとは趣を異にしたクレイグ・ボンドの最終作てぇ勿体をつけるにはむしろ丁度いいオアズケ状態だったかもしれないよ。
 寅さんやハマちゃんみたいな盆正月の風物詩となってた頃は一話完結のコミカル調だったのに対して、クレイグ・ボンドはストーリーに連続性があって多少のクスグリを入れつつも基本がシリアスな基調はラストシーンまで貫徹されてるねぇ。
 グレイグ作品は打ち止めでも007は続くてなテロップが出るのがご愛嬌ながら、従前どおり役者さんが替わるだけでシレっとジェームス・ボンドが登場するのかはたまたコードネームは007でも全く別のエージェントでストーりーが続くのか乞うご期待ってとこじゃないかぃ」 

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最後の決闘裁判

2021-11-08 15:33:49 | 活弁見聞録

ズレ:「リドリー・スコット監督作品らしい重厚な作り込みの時代絵巻ってだけでなく、主人公それぞれの視点から同一シーンの物語を繰り返したうえでクライマックスの決闘シーンになだれ込む展開がなかなか凝ってて思わず巻き戻したくなるようでぃ。
 監督が日本贔屓かどうかは存じ上げないけど時代物の雰囲気と凝った構成から芥川龍之介先生の羅生門や藪の中を思い出したせいか、決闘の殺陣は巌流島の武蔵と小次郎・その後の凱旋は討ち入りから引き上げる四十七士に重なっちまったぜ。
 史実に沿った作品とはいえ登場人物の関係性や会話の応酬は至って今日的で、法治国家の形成に伴って力で個人間の白黒を付ける制度はこれが最後になったとしても勝った方が正義となる戦争てぇシステムは未だに健在な現状にも思いを至すようだわな」

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総理の夫

2021-10-07 22:50:42 | 活弁見聞録

つれ:「よもやガースー総理退陣から自民党総裁選のタイミングを計って公開した訳じゃあるまいけれど、本邦初の女性総理誕生かてぇ目もあった時期だけになかなにタイムリーな題材になってるよねぇ。
 とは言っても俄か仕込みでなく原作は2011年以前の状況を背景にしてるそうだからマニュフェストなんて今となっては死語の類がギャグでなく堂々と登場する辺りは微笑ましく、小沢御大がモデルとのキャラがいかにも憎々しげなのも往時を知る世代には懐かしく感じられるんじゃないかぃ。
 タイトルの印象からはもっとコメディに振った作品かと思ったけど笑いのツボは押さえつつも女性活躍ったって言うほど簡単じゃないってのもしっかり描いてて、本邦はまだ女性トップが活躍してる諸外国のようにはいくまいてぇ事情も垣間見えるってもんだょ」

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フリー・ガイ

2021-09-08 11:27:27 | 活弁見聞録

ズレ:「電子ゲームのAIキャラが人格を持ってゲームの中で行動するようになったらてぇいかにも今日的な設定で、現実社会とゲーム社会が絡み合って進行するストーリーがややこしそうに見えてもテンポよくストンと腑に落ちる辺りはなかなかに達者な作りだわな。
 ゲーム内の出来事として展開されるアクションは大層過激でもあくまでフィクションの体だし主人公のキャラは人間じゃない体だけにとことん明朗快活で前向きだし、ゲームか現実かを問わず周囲を感化しながらの勧善懲悪で目出度し目出度しの大団円に向かうなんざさしずめ当世版大人のメルヘンてな具合じゃねぇか。
 ゲームならではのギャグを連発したり随所に名作のパロディを鏤めたり思い掛けないところで日本も登場したりと笑かし所も満載だから、コロナの憂さを晴らすべく口角を上げて楽しむには打ってつけの作品だぜ」

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