ズレ:「北野武監督作品てぇよりはツービート漫才実写版的コメディーで、そういうノリで前宣伝しつつも一連のフィルムノワールっぽい極道系の作風からしてハードボイルドな人物設定やバイオレンスのどぎつい描写が鏤められてるかと思いきや見事なまでにコテコテのナンセンスに終始して、ざまぁみろと鼻を明かされたような爽快感が味わえるくらいでぃ。
とはいえそこは世界の北野監督だけに凡そコメディには似つかわしくない邦画にしては大々的なカーチェイスシーンも用意されてるのが面目躍如ってとこだけど、老人がバスジャックてぇと鶴田浩二先生主演の名作TVドラマ「男たちの旅路」シリーズの一話で錚々たる老優が心に迫る名演を繰り広げた記憶が強く思い起こされて、果たして北野監督もその辺を意識したのかどうかが気になるわな。
往時は老人の疎外感てのが社会的な課題になりつつある頃だったのがそれから40年近くの時を経てこれぐらいのコメディにしないと老人問題は見向きもされないテーマになってるてぇメッセージが潜んでるなら、いかにも国際映画祭常連監督ならではのシニカルな社会派芸術作品ってことになるんじゃねぇか」