”スローライフ滋賀” 

第166回直木賞作品「塞王の楯」 普段の仕事ぶりが小説に登場

 第166回直木賞に、大津市在住今村翔吾「塞王の楯」が選ばれた。
作品で取り上げたのは、戦国時代に城の石垣造りに活躍した、近江の石工職人集団「穴太衆」
 今も穴太衆として石工の仕事を続ける粟田建設(大津市坂本)代表、粟田純徳さんは今村さんから取材を受け、その結果が作品の随所に盛り込まれた。「裏方の穴太衆にスポットライトを当てた作品が直木賞を取った」と喜ぶ。

 「大津を舞台にした作品を書きたい」。今村さんの取材を受けたのは2年ほど前。普段の仕事ぶりや石工の歴史、家族の話などについて、粟田さんが細かく伝えた。「石工は石を積む人だけと思われるかもしれないが…」と粟田さん。
 石を積んで組み立てる積方、石を運ぶ荷方、石を切り出す山方の3つの役割を合わせて穴太衆と呼ばれる。
 作品の前半で、その役割を説明。主人公は積方で、他の2つの役割も経験。荷方の人物の活躍も描かれている。粟田さんは「作品でも忠実に再現されている」と語る。
 後半には、主人公が砂利を石に当てて、職人たちに次に使う石や配置を細かく指示する場面がある。粟田さんの祖父で師匠の万喜三さん(故人)が実際にやっていた。「祖父が上から石を投げて指示を出し、自分たちがクレーンで運んだこともあった」という。

 「軍事拠点」の城の情報が外部に漏れないよう、穴太衆は資料を残さず、口頭で仕事の方法を伝えてきたという具体的なエピソードも、作品に描かれている。中でもたびたび登場する「石の声を聴け」のフレーズは、石の形や大きさを見極め、それぞれの石をどう積めば良いかを考えるという意味の「代々受け継がれてきた言葉」だ。

 作品を読んで「歴史小説だけど難しい単語が少なくて、分かりやすく楽しい」と感じた粟田さん。2月には今村さんと再会する予定という。「滋賀を題材にした小説を書いて、歴史や琵琶湖以外にも、地元の魅力を伝えて欲しい」と今後の活躍を願っている。

中日新聞より
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